tactics(2/8)



「真奈美、じゃあ……あそこ行こっか?」

「え?どこ?」

「去年の秋に、おれが言ったこと覚えてる?」

「那智君が言ったこと?」

「うん。」


真奈美の耳元に口を近づけ、そっと囁く。


「ホテル、行こっか?」

「えっ……!?」

「あはは〜、真奈美顔真っ赤〜!」

「もうッ!誰のせい!?」

「じゃあ、行こうか?」

「今ッ!?」

「今からだよ。」


そう言って、真奈美の腕を引っ張り部屋を出た。

向かうはホテル街――…。










適当なホテルを探し、中へ入り、

フロントで、電子パネルが光っている空き部屋を一通り見る。

そこで一番普通そうな部屋を選んで、鍵を受け取った。

そっと、真奈美の腕を引っ張り、エレベーターに乗る。


「真奈美、そわそわし過ぎ……。ちょっとは落ち着けよ……。」

「だって……」

「もしかして、こういうトコ来るの初めて?」


そう訊くと、真奈美は黙って頷いた。


エレベーターを降り、ホテルの一室へ入る。


「ねぇ、那智君…この部屋のドコが"普通の部屋"なの……?」

「う〜ん、でも一番見た目的に普通だったんだよ?」


――普通の部屋だと思ったんだけど……。

見たこともないような大きなサイズのベッドが部屋のド真ん中に。

それに、ピンク色の照明……。


一瞬、入るのを躊躇ってしまうような雰囲気だった。




次へ
前へ

戻る

×
- ナノ -