!陽泉戦前









瞬間的に、ああこれは夢だ、と思った。斜め1メートル前にいたのはタツヤだったから。

パスを受け取ってダンクを決める、瞬間ブザービートが鳴り響いて。
タイガ、呼びかけられて肩を抱き合う。またこうやって試合が出来たらいいのに、笑って、また一緒に。



「…ん?」


目を開けると、温かい感触。
下を見ると布団が丸く盛り上がっている。それをめくると、

「は?」

俺のものをくわえている黒子がいた。


「っお前何してんの!?」

「ああ、起きたんですか?」

口から取り出すとしれっとした顔で答える。唾液が糸を引いて落ちた。俺のものは勃ちあがっていて、それは朝だからか黒子が舐めたからか、分からない。


「君が悪いんです」

「あ?何がだよ、つーかお前朝から何してんだよ」

見ると少し不機嫌そうな顔をしている。何か悪いことをしたか考えてみたけれど、寝起きの頭はうまく働かない。昨日喧嘩をした覚えはない。


「君、今朝寝言を言いました」

俺のものから手を離して馬乗りになると、そう呟く。


「なんて?」

「僕のこと抱きしめたかと思ったら、タツヤ、って呼んだんです」


逆光でも睨んでいるのが分かる。確かにタツヤとバスケをする夢を見た。名前を呼んだ記憶はない。ただ、黒子が珍しくこうしてキレているのを見ると、それは事実なんだろう。


「…悪い」

「だから、起こそうと思って」


そう言いながら首筋に顔を埋めて、ゆっくりと這い回る舌。動きは少しもどかしい。耳に移動して、舌先で筋をなぞられてぞくりとする。肩を掴んでそのまま反転させると組み敷いた顔と目が合う、少し不満気な表情。


「で?これがその起こす方法かよ」

「っ、ぁ」


腰に手を滑らせると小さく漏れる声。Tシャツの裾から手を差し込んで撫でると甘い声をあげて首に腕を回してきた。


「お前なに朝から盛ってんの」

「んっ、…ぁ」


うるさいです、と言いながら肩を押しやられて上に乗ってきた。のしかかるという方が正しいかもしれない。

見ると下は穿いていない。勃ちあがった黒子のものがTシャツにひっかかっていて、小さく染みが出来ていた。手を差し込んで触れると跨がったままびくりと肩を震わせる。濡れた感触。手を滑らせるとぐちゅ、と音がした。


「ふっ、ぁ、…ぁっ…」

ふにゃふにゃと身体が倒れ込んでくる。抱き留めてそのまま組み敷くと、さっきまでの強気な態度はどこへいったのか、されるがままといった様子で潤んだ目で見上げてくるだけ。

覆い被さって口付けながら黒子のものに手をかけると切なげに声を漏らす。舌を絡め合う音と先走りの水音だけが響いて。


「っぁ、んっ…」

先走りをすくって後孔に塗り付けると、収縮する内壁に指を飲み込まれた。そのままゆっくりと抜き差しをするとひくついて、小刻みに震える腰。


「いれ、て、…」

「自分で入れてみろよ」


当てがったまま動かないでいると、睨みながら意地悪、と小さく呟いて。我慢できないと言うかのように自分の腰を押し付けて、そのまま飲み込んでいった。入り込む度にぐちゅぐちゅと水音が響いて、ん、と小さく漏らす声。


「っあ、ぁ…!」

突き上げると甘い声が上がる。首に巻き付けられる腕の力が強まって少し苦しい。


「あっ、ぁ、んっ…」

抱きしめると嬉しそうに笑う、やっと笑ったと内心安堵していると、口付けて舌を絡めてきた。朝からこんなに求めるのも珍しい。


「っん…ぁ、あ!…そこ、っ…」

一点を集中して突くと、ぎゅう、としがみついて必死に訴えてくる。打ちつける速度を増すと、耳元で声がどんどん大きくなっていく。


「っも、ぁ、あ、…っあぁ…!」

しがみつく力が強まって、腹の間で黒子のものが震えるのが分かった。精子が互いの身体に飛び散っていく。同時に中で果てて、抱きしめ合ったまま互いに息をついていると、火神くん、と声がした。


「…夢、見たんですか。氷室さんの」

「………ああ、見た」


どんな内容だったのかとは聞いてこない。ただ、背中に回った腕がゆっくりと伸びてきて、後ろ髪をそっと撫でられた。黒子なりに何か感じ取ったのかもしれない。

と、突然険しい顔をして、それでも、と続けた。


「…関係ありませんから」

「あ?何が?」

「夢の内容がどうであれ、また他の人の名前呼んだら、同じことになりますから」


声は少し拗ねたような、怒ったようなものだったけど。



「…お前笑ってんじゃん」

そう言って口付けると、重なった唇からクスクスと笑い声が漏れた。


朝飯何がいい?キスの合間に尋ねると、トースト、と返ってきた。起き上がろうとすると、ぎゅ、と抱きしめてくる。


「いつまでこうしてんだ」

「満足するまでです」


誰が?と聞くと、僕が、と返ってきて。



「…いつ満足すんの?」

「さあ」

「んだよそれ…」


抱き合ったまま目を閉じると、またぼんやりと眠気が訪れる。


どんな夢を見たって怖くはない、過去を思って苦しくなることだって。こうして隣にいるなら。目覚めてすぐに顔を見られるなら。


腕の中から小さく寝息が聞こえてきた。温かさを感じながら眠りの波に身を預ける。


一日はまだ、始まりそうにない。
























*******
黒子が嫉妬して誘い受けとリクエスト頂きました。


名前の呼び間違いだとか、些細なことにも嫉妬して拗ねる黒子だといいと思います。


ゆず様、素敵なリクエストをありがとうございました!


20120908
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