ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



(あ……)

大勢の人々の行き交う通りで、ローズはあわてて物陰に身を潜める。



(マイク……)

ローズの視線の先にいるのは、腕を組み、何事かを話しながら楽しげに笑う若い男女の姿だった。
ローズは、二人から視線を逸らし、寂しげに俯いた。



(馬鹿ね…隠れる必要なんてないのに…
マイクは私の存在にすら気付いていない。
ケリーと私じゃ、勝負にならないこともわかってる…
でも、ケリーは…)

ローズはとぼとぼと歩きながら、学生の頃の記憶に思いを馳せる。
誰から見ても美しいケリーは、クラスでもとても目立つ存在だった。
さらに、家が資産家であったこともあり、それゆえ、彼女の気性は激しくわがままで、男関係もとても派手だった。
地味で内気なクラスメイトは多かれ少なかれ、彼女のせいでいやな思いをさせられていた。
ローズもその一人だった。
まるで女王に仕えるメイドのように、良いようにこき使われ馬鹿にされた。









「ローズ、家庭科の宿題はちゃんとやって来た?」

「え…ええ…ケリー、これで良いかしら?」

「何?この田舎くさい柄…
私にこんなものを提出しろっていうの?
こんなもの提出したら、私が作ったものじゃないってすぐにばれるじゃない!
もっと私のイメージにあった生地を探して来なさい!
今度はもっと上等で綺麗なものにするのよ!わかった!」

そう言うと、ケリーはローズの手渡したエプロンを引き裂いた。



「ケリー!」

「何よ、その目は…」

ケリーの瞳に睨みつけられると、ローズは身が縮まる想いを感じ、言いたいことも言えなくなった。



「私は、友達のいないあんたと友達でいてあげてるのよ。
わかってる?
お誕生日のパーティにもちゃんと呼んであげたわよね?
あんた、そのことをすごく喜んでたじゃない。
あんたはさえないし、家も貧乏だし、お裁縫やお料理くらいしか取り柄がないんだから、こんなことくらいもっとちゃんとしたら?」

「ご、ごめんなさい…
でも、私…生地を買うお金が…」

「そんなことなら先に言いなさいよ!」

ケリーは、ポケットの小銭をローズに向かって投げつけた。



「これで足りなかったら、後で家に取りに来なさい!」

そう言い残し、ケリーは去って行った。
ローズは、悔しさと悲しさの混じった涙を流しながら、床に散らばったお金を拾った。









(……今更、そんなこと思い出しても仕方ないわね…)

ローズはいやな記憶を払い除けるように首を振る。


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