ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
遺跡の銅像・1






「この馬鹿!
人でなし!
よくも勝手な真似を…!!」

「何だとぉ?
僕は礼を言われても、文句を言われるような筋合いはない!
誰のおかげでこうして宿に泊まる事が出来たって思ってるんだ!」

「誰って、それをいうならサンドラだろ!」

「何だって〜〜!」



「まぁまぁ、お二人共どうか落ちついて下さい。」



今にも取っ組み合いの喧嘩を始めようとしているアルルとカルフの間に、クラウドが割って入り二人を引き離す。



「あんな貴重なものを売っ払うなんて、こいつ、どうかしてるよ。」

いまだ少しも怒りのおさまらないアルルは、刺すような視線をカルフに向けた。



「だから、一応、酒は買って来てやっただろう!」

「なんだよ、こんな安酒!
しかも、あんたはそんな服まで買って…」

その言葉にカルフの眉間の皺は深さを増し、こめかみには青い血管が浮きあがった。



「……あのなぁ…
いつまで僕に女装をさせとくつもりなんだ。
あんな服を着せられたのも、元はといえばおまえのせいだろう!」

「おまえ……」

アルルは溜め息を吐き、冷たい目つきでカルフを一瞥した。



「な、何なんだよ…」

「あんた、最近、やけに偉そうじゃない?
出会った頃のあんたはもっと礼儀正しかったはずだけど…
一緒に旅してるからって、私のことを自分の女みたいに勘違いしてるんじゃないだろうね!?」

「だ、だ、だ、誰が!!
僕はそんな悪趣味じゃない!」

「なんだって〜!」



「まぁまぁまぁ……」



再び、顔を付き合わせるアルルとカルフを、クラウドがそっと引き離す。



「アルル様が大切なお酒を飲めずにお怒りになるお気持ちはよくわかるのですが、カルフ様もあのままのお姿ではお可哀想です。
しかも、我々には路銀もない。
売れるようなものもない。
このままでは野宿はもちろんのこと、食べるものさえないのですから早速困ります。
そこで、カルフ様はあの酒を売ることを考えられたのです。
私達がなんとかこの窮地を乗り越えられるように…との想いから、苦渋の選択をされたのだと想います。
幸い、魔女の秘酒は思ったよりも高くで売れました。
お蔭様でしばらくは安全に旅を続けることが出来ます。」

そう言うと、クラウドは天使のごとき慈愛に満ちた微笑を浮かべる。
クラウドの物静かな声と話しぶりとその微笑みは、二人のささくれた心を落ち着かせた。


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