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「君は、俺の家族の事情はもう知ってるのか?
その……」

「ひかりと和彦さんが異父兄妹だということですか?」

「そうか…もう聞いてたんだな。」

和彦さんは安堵したような納得したような…そんな表情で小さく頷いた。



「ひかりは…和彦さんが早くに家を出たのは自分のせいじゃないかって思ってるみたいです。」

「なんだって?なんで、そんなことを……」

俺の言葉に、和彦さんは目を丸くして驚いた。



「和彦さんはお母さんに似て見た目も良ければ、頭も良い。
だけど、それに引き換え自分は見てくれも頭も悪い。
和彦さんがいたら、兄妹だということでどうしても比べられてしまうから、自分のことを気遣ってそれで出て行ったんじゃないかって……」

「美幸の奴…そんなことを……」



いつだったか、ひかりは俺に家庭の事情を打ち明けてくれたことがあった。
ひかりのお母さんはまだ学生のうちに出来ちゃった結婚し、和彦さんが産まれたのだと言う。
だけど、その旦那さんは子供が出来てもまともに働こうとせず、そんな旦那さんに愛想を尽かしたお母さんは一年程で離婚。
その後は、実家の手は借りていたものの、大学に通いながら子育てをし、さらには司法試験にも受かって弁護士として働いていたというやり手なのだという。
やがて、お母さんがそろそろ三十才になろうかという頃にひかりのお父さんと知り合い、そして二人は結婚し、ひかりが産まれたということだった。
なんでも、和彦さんのお父さんはかなりのイケメンだったらしく、それで失敗したからこそ、ひかりのお母さんはごく平凡なお父さんを好きになったのだとひかりは言っていた。
だから、和彦さんと自分では見た目も頭の程度も違うんだと、少し寂しそうに話してくれた。



「違うんですか?」

「当たり前だ…
俺は……あいつのことをそんな風に思ったことはない。
そりゃあ、ものすごい美人ってわけではないけど、けっこう可愛い顔してると思わないか?
俺…今でも覚えてるんだ。
美幸が産まれた時のこと……
病院に赤ちゃんはたくさんいたけど、その中でも美幸が一番可愛いって思ったよ。
ただ…小さい頃から俺と美幸はどこに行っても似てないって言われた。
俺は母さん似、美幸は父さん似だから仕方ないことなんだけど、そのことが子供の頃はやけに寂しく感じられたもんだ。」



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