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(……それにしてもないなぁ…一体、どこにあるんだろう…?)



おじいちゃんの作ったブレスレットはなかなかみつからなかった。
そろそろ、ランプの油もなくなる頃だ。
僕は少し焦りながら、気合いを入れておじいちゃんのブレスレットを探し始めた。

その時…僕は、部屋の最奥に小さな扉があるのをみつけた。



(そうだ…あそこは……)



扉を目の前にして、僕はまた幼い頃の記憶を思い出していた。



当然のことだけど、当時からあの扉はあった。
そこには南京錠がかけられており、中になにがあるのかわからないことが、僕らの好奇心をかき立てた。
兄はあそこにはおばけが住んでると言って、幼い僕を怖がらせた。
ずっとあの部屋のことが気になってた僕は、いつだったかついにたまらず、あの部屋の事を父さんに聞いたことがある。
すると、あそこはただの物置きで、除草剤などがあって子供だった僕達が触ると危険なので鍵をかけてあるんだということだった。
それを聞いてすっかり気が抜けてしまった僕は、あの扉のこともいつしか忘れ果てていた。



(子供の頃って、想像力が旺盛なんだよな…)



きっと、兄さんもあの部屋におばけがいるなんて本気で考えてたわけではないだろう。
兄さんは僕より六つ年上だから、子供とは言えそんなことを信じる筈がない。
ただ、ちょっと僕を怖がらせて面白がっていただけだろう。
今見れば、そこがちょっとした物置き部屋だろうということは扉の大きさからも簡単に推測がつくのに…



幼い頃の自分が情けないやらおかしいやら…
ランプの明かりだけが灯る薄暗いその部屋で、僕は一人頬を緩めた。

ふと見ると、扉に取り付けられた南京錠もずいぶんと錆びついている。
あの頃、兄さんと鍵を壊そうとしたこともあった。
でも、子供の力ではその鍵を開ける事はとても出来なかった。



(そうだ…きっと開けられなかったから、兄さんはあそこにはおばけが住んでるなんて言い出したんだ。
開けられなかったことが悔しかったんだな、きっと…)

僕の頬はますます緩む。
父さんの探し物のおかげで、僕は思いがけず楽しい時を過ごすことが出来た。
だけど、今はそんなことを言っている場合じゃない。
父さんは、きっと苛々しながら僕が戻って来るのを待っているはずだ。
でも、この部屋はほとんど探し尽くした。
父さんの記憶違いなんじゃないかと思うけど、そう言ったら父さんはきっと僕の探し方が悪いと怒るだろうな。
でも、本当にみつからないんだ…
どうしよう…



その時、僕の視線が再びあの小さな扉に停まった。


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