「考えてみろよ。
願い石が獣人達の村にあったら、獣人達がそれを使わないはずがないじゃないか。」

フレイザーは、両手を腰にあて胸を張って微笑んだ。



「双子石を持ってるのかもしれないぞ。」

「……ふ、双子石……?」

ラスターの聞きなれない言葉に、フレイザーの顔から微笑みが消えた。



「なんだ、それも忘れちまったのか!?」

ラスターは呆れたと言わんばかりに首を振り、説明を始めた。



「あのな、フレイザー…
願い石には同じものが常に二つずつある。
だから双子石って呼ばれるんだ。」

「な、なんでだ?
なんだって同じものが二つもあるんだ?」

「今、説明してやってるんだから黙って聞け!
双子石の一つは願いを叶えるもの、そしてもう一つはその願いを解除するものだ。」

「願いを解除だって…!?
そんなもったいないことをする奴がいるのか?」

フレイザーは目を丸くして身を乗り出した。



「フレイザー、私の聞いた話では、ある男が昔、願い石をみつけて年を取らない身体を手に入れたそうだ。
彼は本当に年を取らない身体になった。
だが、そのことで彼を妬んだり気味悪がって彼の周りからはどんどんと人がいなくなっていった。
彼は人気のない森の奥に移り住み家族だけでひっそりと暮らし始めた。
やがて、彼の妻だけが年老い、彼は失意の中、妻を見送った。
年を取らないと言う事が幸せなことではないと悟った彼は双子石を探しにでかけたが、何年経っても双子石はみつからず、戻った時には彼の子供達は父親の年を越えていた…
絶望した彼は最後には自ら命を断ったということだ…」

「そんな哀しいことがあったのか…」

ダルシャの話に、その場の空気が暗く沈みこんだ。



「俺の聞いた話じゃ夫婦喧嘩をした後にたまたま願い石をみつけ、妻をシャーズに変えた男がいたってことだぜ。
結局、解除の石はみつからなかったって話だけどな。」

「シャーズって、たまに食べるあのおいしい肉だよね。
じゃ、その元は人間だったシャーズはどうなったの?」

「さぁ…解体されて食われたんじゃないか?」

「ラスター!!」

セリナが眉間に皺を寄せてラスターを睨みつける。



「エリオット、そんなの性質の良くないジョークよ。
気にする事ないわ。」

エリオットの肩に優しく手を置くセリナに向かって、エリオットはなんともいえない表情で頷いた。


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