次の日からは、ジャネットの態度も落ち着き、普段と変わらない様子に皆もほっと胸を撫で下ろした。

これといって変わったことのない日々はあっという間に過ぎ去り、船は、ペルージャ最大の港町・ディーラに着いた。







「ここはえらく賑やかな町だね。」

「あぁ、おそらくここほど大きな港町は他にはないと思う。
私はここへは何度も来たことがあるんだ。
今回は……いつも泊まる宿はやめておこう。」

そう言うと、ダルシャは慣れた様子で町の中を歩き始めた。
五人はダルシャの後を着いていく。


「そうだな……ここなら、大丈夫だろう。」

ダルシャは、そんな独り言を言ってある宿屋の前で立ち止まり、小さく頷く。
それは、普段泊まっている宿よりも随分と立派な宿屋だった。



「まぁ!ダルシャ様!」

宿屋に入るなり声をかけられ、ダルシャは苦い笑みを浮かべる。



「ダルシャ様がうちなんかにお泊まり下さるとは、光栄に存じます。」

「ははは……たまには違う宿に泊まってみたくなってな。」

「特別室は三つしかありませんが、いかがいたしましょう?」

「……では、特別室は私だけで良い。友人達にはその他の部屋を。」

「かしこまりました。」

頭を下げ、奥に引っ込みかけた宿の主人がまた振り返った。



「そうそう!聞きましたよ。
リュシー様が再婚なされたとか……おめでとうございます!」

「な、なんだって!
あの叔母上が再婚!
相手は誰なんだ!?」

「え……ご存じなかったんですか?
詳しいことがわかりましたら、またお伝えに参ります。
まずはお部屋の方に。」

宿の主人はそう言うと、店の奥から鍵を持ち出し、皆を部屋に案内した。



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