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その場に残された四人は、ダルシャの走って行った方向を呆然とみつめる…
「なぁ、ラスター、今のあのちっこいねずみ…じゃない、あれはとにかく危険な魔物じゃないんだろ?」
「あぁ、あいつは前歯はけっこう鋭いが好戦的な性格じゃないからな。
中には手懐けてペットとして飼ってる奴もいるって話だぜ。
……って、あんた、そんなことも忘れちまったのか?」
「あ…?あぁ…魔物のことはすっこーんと頭の中から消えうせてんだ。
エリオット、おまえはどうだ?」
「う、うん、僕も同じ。
なんでだろうねぇ?おかしいよね、ハハハ…」
エリオットは無理して作り笑いを浮かべた。
「……ま、とにかく…
何が気に入らなかったのか知らないが、あいつは、自分の意思でいなくなったんだから、放っておこうぜ。」
そう言うと、ラスターは、ダルシャが走り去った方向にくるりと背を向けた。
「おいおい、そうはいかないぜ。
まだロンダリンの町まではずいぶんあるんだからな。」
フレイザーの言葉に、ラスターは小さく舌打ちをした。
セリナの石を察知する能力は、ある程度石に近付かないと反応しないらしい。
今は、石の行方は皆目わからないとのことだったが、セリナを追いかけている者達はおそらく今もラシーナ経由で進んでいるはず…
そのため、一行は魔の山の反対側のロンダリン方向へ進んで行く事にしたのだった。
相変わらず、エリオットの魔力は効力を失ったままなのだから、今、ダルシャにいなくなられてしまっては山を抜けることさえ危うい。
「ダルシャ〜〜!
どこにいるんだ〜?!」
フレイザーの声があたりに響く。
「フレイザー、大丈夫?そんな大きな声出して…
魔物が寄って来ない?」
「あ、そうか…
じゃあ、小さな声で探さないとな。
確か、あいつはこっちの方に行ったよな。
皆、離れるなよ!」
声を控えめにしながら、フレイザーとエリオットはダルシャの名を呼び、茂みの中を進んで行った。
「ダルシャ〜!どこだ?」
しばらく進んだ時、少し離れた茂みに動きがあった。
四人の間に緊張感が走る…
「く…来るな!」
そこから聞こえて来たのは、ダルシャの声だった。
「なんだ、ダルシャ、そんな所にいたのか…」
「来るなーーーーーっっ!」
フレイザーが茂みに近付くと、ダルシャの悲鳴にも似た声があがった。
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