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「ジャックーーー!」



隣町はフォスターとはまるで違い、寂れた小さな田舎町といった風情で、外灯や店の明かりも少ないため、暗く、人通りもまばらだった。
汗にまみれ、転んで膝をすりむき、髪をふり乱したフレイザーの姿は異様なものだったが、幸いにもその暗さのお陰で目立つことなく闇に紛れた。
町に着くなり、フレイザーはジャックを探して走りまわる。
宿屋を発見したフレイザーは、そこにジャックらしい者が泊まっていることを突きとめたが、ジャックは部屋にはおらず出掛けていることを聞かされ、余計に不安な気持ちを募らせた。



「ジャック!
どこにいるんだ!
ジャーーーック!」



(……どうか…どうか、間に合ってくれ!
神様!お願いだ!
どうか、俺が行くまでジャックを引きとめてくれ!)



心の中で普段はあまり思い出すことのない神に手を合わせ、半狂乱になってジャックを探すフレイザーは、やがて、町のはずれにジャックらしき者が歩いて行くのを見たという話を聞きこみ、教えられた方向へ駆け出した。







今宵の月は小さく、あたりの様子はあまりよく見えない。
ジャックは沼のほとりに佇み、薄明かりの中、懸命に目を凝らす。



「ジャーーーック!」



背後から聞こえてきた聞き覚えのある声に、ジャックは我が耳を疑いながらゆっくりと振り返った。



「ジャックーーー!」

「……フレイザー…?」



暗くてはっきりと見えないとはいえ、その体型や声でやはりそれが幻ではなく本物のフレイザーだということをジャックは確認する。



「この……馬鹿野郎!」

突然、響いた乾いた音と同時にジャックは頬に痛みを覚え、一瞬、眩暈のようなものを感じた。
何が起きたかを理解する前に、今度はフレイザーに強く抱き締められ、ジャックの頭の中は混乱の度合いを増す。




「ジャック…なんでこんなことを…」



フレイザーの身体は熱い熱を帯び、早鐘を打つ心臓の鼓動がジャックにもはっきりと伝わった。
激しい息遣いの合間に聞こえるすすり泣きの声に、ジャックの鼓動も速さを増した。



「……フレイザー…泣いてるのか?どうした!?
何かあったのか!?」

「な…何かじゃないだろ…
おまえ、言ったじゃないか。
あんな痛くて苦しい想いはもう二度としたくないって、だから信じてたのに…酷いじゃないか。
なんでこんな馬鹿なこと……」

「……なんだって?」

「……でも、良かった…
おまえが無事でいてくれて……
おまえに何かあったら、俺は……」

「……ちょ…ちょっと待ってくれ…
フレイザー…一体、何のことを言ってるんだ?」

ジャックは、フレイザーの身体を優しく押し離した。


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