「でも、エリオット…
それじゃあ、あの時、何もせずにただ殺されてた方が良いと思うか?
ダルシャの話じゃ、あのままじゃ間違いなく殺されてたってことだけど、おまえ…本当にそれで良かったのか?」

「酷いよ、フレイザー!
そんなこと、どっちが良かったなんて選べるわけないじゃないか。
そりゃあボクだって死にたくはなかったよ。
殺されるかもしれないって思ったら、身体が震える程怖かった…
だけど、今になってこんな想いをするくらいなら殺された方が良かったって思うこともあるよ…そうだね、ボクだけだったらきっとその方が良かったかもしれない。
でも、ダルシャも一緒だった。
ダルシャが殺されるのをそのまま黙って見てるわけにもいかなかったし、それに願い石も……そんなこと、選べるわけないじゃないか!」

その時のエリオットの気持ちがフレイザーには痛い程わかり、フレイザーは思わず唇を噛み締める。



「……エリオット……ごめん……」

エリオットはそれには何も答えず、黙って俯いたままだった。
気まずい沈黙がしばらく続いた後、フレイザーがようやく口を開く。



「エリオット…なんだかいいかげんなことを言うみたいだけどさ…
そんな風に選びようのない選択肢しかない場合って、きっと選んだものが正解だって思うんだ。
……それにさ、俺やダルシャのことも考えてくれよ。
ダルシャだって、自分のためにおまえに罪を背負わせたことを悔やんでる。
だから、ダルシャはあいつらのことを黙ってたのに、それを俺がうかつに話してしまった。
そのことで、俺も苦しい。
俺があんなこと話さなかったら、おまえにこんな苦しみを与えずにすんだのにって、とても後悔してる…
だけどな、エリオット…俺は、おまえが生きててくれたこと、ダルシャを守ってくれたことを感謝してる。
おまえがもしも死んでたら、俺だってきっと生きていけないぞ。
だって、あの時、遺跡に行こうって誘ったのは俺だし、そのせいで俺達こんな所に来る羽目になったんだし、それにおまえを魔法使いにしたのも俺だし…それに…」

「フレイザー、もうやめて…
君のせいなんかじゃないんだ。」

「だけど……」

話しかけたフレイザーの瞳をみつめて首を振り、エリオットは穏やかに微笑んだ。


- 422 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

トップ 章トップ

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -