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「フレイザー、疲れなかったか?」
「あぁ、俺なら全然大丈夫だ。
おまえこそ、顔色が悪いみたいだけど、馬車に酔ったんじゃないのか?」
「酔ってなんてないさ!
そんなことより、宿を……あ、あそこで良いか。」
ジャックは目に付いた宿を指差し、二人はその宿へ向かった。
*
「本当に大丈夫なのか?
食事もあんまり食べなかったじゃないか。」
「大丈夫だよ。
ここの食事は量が多過ぎるんだよ。」
食事をすませ、部屋に戻った二人は、各々のベッドに腰掛けて寛ぐ。
「寝るにはまだ少し早いけど…
フレイザー、何か飲む?」
「今は良いよ。
……それより、ジャック…あのさ…ちょっと話をしないか?」
フレイザーはジャックの態度を探るように、どこか不自然な笑顔を浮かべ、そう言った。
「話って…何の?」
「何って……あの…おまえ、ダルシャのことはまだ聞いてないよな?」
「ダルシャの事……って?
ダルシャのどういうこと?」
「だから……ダルシャが、なんで願い石を探してるのかってこと。」
「あぁ、そのことか。
それなら聞いてないけど、別に聞きたくもないよ。
どうせ、セリナみたいに切羽詰った問題じゃないんだろ?」
「そうだな…確かに、セリナのような問題があるわけじゃないけど、奴の悩みもかなり大変なことだぞ。
願い石でないとなんとも出来ないことだしな。」
「……どういうこと?」
「実はな…
ダルシャは呪いをかけられてるんだ。」
「呪いを…!」
ジャックの瞳が大きく見開かれ、フレイザーはそれを見て納得したように頷いた。
(やっぱりだ…
ジャックは「呪い」って言葉にかなり動揺した。
俺が考えた通り、ジャックも呪いをかけられてるに違いない!)
「で、でも、フレイザー。
ダルシャはどんな呪いをかけられてるんだ?
それに、呪いなら、かけた魔法使いに解いてもらえないのか?」
ジャックは、フレイザーの推察通り、さらに身を乗り出して興味を示した。
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