「あんたがもっとちゃんと馬車の時間を調べておかないからだろ。」

ラスターは、意地悪な瞳でダルシャを一瞥した。




結局、ダルシャの聞きこんで来た話以外にはこれと言って願い石のあてはないため、一行はディーラスの町を目指す事になった。
だが、残念な事にその日の馬車はもう出た後で、しかも明日と明後日は船の入港がないため、馬車は来ないと言う。



「そんなこと言っても仕方ないじゃないか。
ラスターは、昨日はダルシャの意見の反対してたんだし…」

「俺は別に反対したわけじゃないぜ。
ただ、そんな話は信じられないって言っただけだ。
でも、全くあてがないんだったら、どこに向かおうとかまわない。
まずはディーラスに行って、そんな話は根も葉もない話だってことをしっかりと認識してから、改めて探すのも良いと思うってだけの話さ。」

ラスターの皮肉めいた話しぶりに、フレイザーの顔も不機嫌さを増した。



「おまえなぁ……」

「ねぇ、じゃあ、この先の町まで歩くっていうのはどう?
ここにずっといても仕方ないし、いくつか先の町から馬車に乗れば良いじゃない。
そこで、また何か別の話が聞けるかもしれないよ。」

フレイザーとラスターが喧嘩になりそうな気配を察知したのか、エリオットが一際にこやかな顔で提案した。



「賛成!
ここにいたって仕方ないわ。
ねぇ、フレイザー、宿のご主人にこのあたりのことを聞いて来てよ!」

「え…?
……あぁ、わかった。
ジャック、おまえも来いよ。」

立ち上がった二人の背中に、ラスターの声が飛ぶ。



「いい年して、どこにいくにも二人一緒か。
仲の良いこったな。」

振り返ろうとしたフレイザーの脇腹を小突き、ジャックは小さく首を振る。
フレイザーはジャックの顔をみつめ、ゆっくりと頷いた。



「……そうだったな。」

フレイザーはジャックに優しく微笑みもう一度頷くと、再び歩き出した。


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