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会場の準備が整い、出番を知らせにリカールの部屋を訪れた。



「マルタン、準備が出来たのか?」

扉を開け私を出迎えてくれたのは意外にもリカールではなくリュックだった。



「リュック、どうしてここへ?」

「あぁ、リカールの取材みたいなもんだな。」

当のリカールはというと、部屋の隅で身体をほぐしていたが、私はその姿を見て驚いた。
彼は短い皮の腰巻のようなものを身にまとっていただけなのだ。
私はまるで裸体の女性を目の前にしたように、あわてて目をそらした。



「リ、リカールさん、準備が整いましたので予定通りあと三十分後の出番になります。」

「わかりました。」

「じゃあ、そろそろ俺は行かなきゃならないな。
マルタン、後は頼んだぜ。」

リュックは、私とほぼ入れ違いに部屋を出て行った。
私もリュックに続いて部屋を出ようとした時、今度はジャックが部屋に入って来た。



「マルタン、あんたも手伝ってくれ!」

何を手伝うのかと思っていると、ジャックは奥の棚から鉄製の胸当てなどの装備を取りだした。




「マルタン、サンダルの編み方はわかるか?」

「いえ…よくわかりません。」

「じゃあ、この機会に覚えとくんだな。」

そう言って、黒く染め上げられた革のひもをリカールの足に慣れた手付きで編み上げていく。



「ざっとこんな感じなんだが、闘いの途中でほどけたりしないように、かといって締めつけ過ぎないようにしっかりと編むんだぜ。」

私はジャックの動作を頭に刻み込むように見ていたが、何度も練習しなければ彼のように手際良くは出来ないだろう。
その後は、リカールの身体に胸あてを装着し、腕には籠手を、最後に長い髪をまとめて小さ目の兜をかぶせ彼の装備は完成した。
立ちあがったリカールは、まさに古代の剣闘士のようだった。
こんな凛々しい姿を見せられたら、女性達が熱狂するのも当然のことだ。
しかし、逆に考えれば、わざわざこんな格好をさせられて闘わせられるのは見世物のようでもある。
リカールはそのことを不快には感じていないのだろうか…?

ジャックが、リカールに剣を手渡し、リカールの準備はすべて整った。
いよいよ、彼の出番だ。


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