会場に入ると、私とリュックは各々の持ち場に着いた。
私の仕事は裏方だから特に問題はないのだが、リュックはステージに立つのだ。
その事で心配していたのだが、昨夜のリュックはもらってきた資料に軽く目を通しただけだった。
話すことは、ステージに出てから考えると言っていたが、大丈夫なのだろうか?
それに、彼の衣裳もまだ昨夜の時点では間に合っていなかったのだ。
開場までに間に合うのかと、私はそんなことも心配していたのだが、当のリュックは衣裳のこともまるで意に介してはいないようだった。

バタバタと走り回っているうちに、いつの間にか開場の時間が近付いていた。
今の所、緊急事態のようなことはなく、すべて順調に運んでいるようだ。
今日は柿落としということで、いつもより開場の時間が早く出しものも多い。
まず、大道芸があり、その後に格闘技、そして最後に剣の闘いが行われることになっている。
出番が遅いせいか、噂のリカールはまだ控え室には現れていない。



「そろそろ開けるぞ。
じゃあ、マルタンとジャックは外で客を誘導してくれ。
ジャック、マルタンに指示してやってくれ。」

私はジャックと共に、会場の外へ出た。
客の数は私達がここへ着いた時よりもずっと多くなっていた。
ジャックは、以前からここで働いているらしく、慣れた様子で私に指示を与えてくれた。
観客達を二列に並ばせていると、不意に入口の扉が開いた。
入口に駆け込もうとする客達に大きな声で「走らないように」と注意し、静止する。
そのほとんどは女性客だ。
きっと少しでも前の方でリカールを見たいのだろう。
思っていた以上に疲れる仕事だった。
熱狂的な女性客の後はさほど混乱もなく、スムーズに客は流れた。
あんなにたくさんいた客達がどんどん会場の中に吸い込まれていく。
今日だけで、相当な売上げになっているはずだ。
最後の客が会場に入った時点で、満員の看板がかけられ扉が閉じられた。



「お疲れだったな。
お蔭様で今日はすでに会場は満杯だ。
立ち見まで出てる。
思った以上の客入りだな!」

ハンクは、満足げに微笑みながらそう言った。


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