019 : 失楽園1






(私ったら、また…)

クロワは、庭の片隅に佇み、つい先程のことを思い出して自己嫌悪に陥っていた。



ステファンに悪意がないことは、言われなくてもわかっている。
それなのに、過剰に反応してしまう自分の弱さが情けなく、クロワは涙がこみ上げてくるのを必死でこらえた。



(私は天使なんかじゃない…
楽園になんて行ける人間じゃないのよ…
私は地獄から来て、地獄へ沈んで行く人間なんだもの…)



クロワは、青く高い空を見上げた。
まるで、天界に恋焦がれるような眼差しで…



「クロワさん!」

「ステファン!あ…さっきはごめんなさいね。」

「ううん…」

「クロワさん、花壇をもう少し増やそうと思うのだけど、どのあたりが良いかしら?
百合を植えようかと思うのだけど。」

「あ…そ、そうですね。
えっと…どこが良いかしら?」

クロワがあたりを見渡すと、ステファンは一方向を指差した。



「あそこだよ。」

「あそこは畑を作ろうと思ってたんだけど…」

ステファンは首を振る。



「どうしてもあそこが良いの?」

「うん、おじいちゃんがそう言うから…」

「あら、またおじいちゃん?
わかったわ、じゃあ、後で百合の球根を買いに行きましょう。
その前に、種を植えましょうね。」

「早くお花がいっぱいになると良いわね。」

「うん!」

三人は、花壇に向かった。




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