014 : 夢であるように1






「あれっ?クロワさんとステファンは、どうしたんだ?」

「私が見て来よう。」

いつもなら私達より先に食堂に着いているクロワの姿が、その朝はそこになかった。
ステファンもいない所を見ると、もしや彼が体調でも崩したのかと考え見に行くと、ステファンがクロワに取りすがって涙を流していた。



「クロワさん、どうかしたんですか?」

「あぁ、マルタンさん…
ステファンがちょっと怖い夢を見たそうで…
大丈夫よ、ステファン。
おじちゃんはもうすぐ帰って来られるわ。
あなたを置いてどこかに行ったりなんてしないわよ。」

「だって、おじちゃんは…」

「ステファン、今のは夢。
ステファンの心が、おじちゃんがいなくて寂しい、寂しいと思ってるからそんな夢を見ただけなのよ。
大丈夫!大丈夫!
さ!お顔を洗ってすっきりしましょうね!」

泣き顔のステファンは、クロワに手をひかれて部屋を出て行った。



ブランドンとシスター・キャロルがここを出てから二週間程の月日が経っていた。
大事な用があるとそれだけ言って、二人は慌しく出て行ったが、今、考えるとどこか様子がおかしかったような気がする。
しかし、彼らの用がどういうものなのか私には見当も付かない。

ステファンは、数日は特に変わった様子は見られなかった。
子供達と元気に遊んでいるように見えたが、日が経つごとに沈んでいくのが傍目にもよくわかった。
考えてみれば、まだ物心が付かないうちにステファンは両親と別れている。
彼にとって、一番頼れる者はブランドンなのだ。
たとえ血の繋がりはなくとも、彼にとってはブランドンが一番大切な人なのだ。
しかも、彼は今まで一日たりともブランドンと離れたことがない。
いくら身近に大勢の人間がいようとも、ブランドンがいないことは、彼を酷く不安にさせるのだろう。

ステファンは、どうやら自分を置いてブランドンがどこかに行ってしまうような夢を見たようだ。
クロワの言う通り、それは彼の不安が夢に現れたに過ぎない。
ブランドンがこのまま帰って来ないなんてことはありえない。
もちろん、不慮の災難にでも巻き込まれたらそうとも言いきれないが…おそらく、そんなことはないだろう。
孤児院の運営もまだスタートしたばかりなのだ。
彼にいなくなられては困る。


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