一年の頃、俺が大事に育てていた花壇が踏み荒らされていた。
犯人はわからない。足跡は複数で、しかも執拗に重ねてつけられていたから靴底の特定は難しかった。やるせない気持ちをどこにも吐き出せないまま、辛うじて無事だった花達を植え替える作業に没頭した。
湿った土を掘り返して、根を傷付けないように優しく鉢植えに埋める。どの子もきれいに咲いていた頃の元気はないけれど、少しでも早く元気になるように、願いを込めて水をあげる。
それを何度か繰り返すうち、怒りは少しずつ引いていった。残ったのは虚しさと、悲しさと、悔しさだ。
俺が気に入らないのなら、本人に言いに来ればいい。言ってくれればどうにか出来る事は多いが、知り得ない場所での不満はどうしようもできないのだから。たまたまここを通りがかった、目に入った花が目障りだった誰かに衝動のまま傷つけられたのなら、とても理不尽で許し難い事だ。無抵抗の何かを傷付ける事に、相手が人間かそうでないかなど関係ない。
皆、生きているのに。形は違えど、同じ生き物なのに。

植え替えた鉢植えを持って立ち上がる。今度はこの子達が、きちんと愛してもらえる場所に置いてあげよう。そのための許可は既に取ってある。陽のよく当たる、時々生徒が訪れる屋上。あそこならきっと、この子達が傷付けられる事はないだろう。












ここで初めて幸仁が出会ってたらいいなって

2011/9/27
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