自慢じゃないが、謙也さんの声ならどこにいたって聞こえる自信がある。騒がしい中に謙也さんがいても、静かな場所で謙也さんがひそひそ話をしていても、俺の耳は謙也さんの声を拾い上げる。もちろん、ヘッドホンを付けていたってそれで音楽を聴いていたって、だ。


「……とかって白石から聞いたんやけど、真相はどうなん?」
「謙也さん…」
「なんや」
「アホっすね」


廊下で俺を呼び止めた謙也さんはいつも通り、振り返った俺に「なあ光!」と叫んでから冒頭の話をぶちまけた。といってもかなり要約したものだから、実際はもっと長かった。つまりは延々と俺のデレとやらの話を俺に説明されていたのだ。
常々おもっとったけど、謙也さんは、あほだ。アホだ。阿呆だ。


「おい、今失礼なこと考えたやろ」
「今度は自意識過剰ッスか」
「なんやてー!?」


煩い。喚き散らす謙也さんの襟元を掴んだ。騒ぎを聞いてたらしい友人が笑いをこらえた顔でこちらを見ている。後で殴っておこう。
大体、謙也さんはなぜ白石部長の話を鵜呑みにするのだ。遊ばれていると何故気づかない、腹が立つ。それをわざわざ本人に言いに来るのも腹が立つ。俺の話を聞きたいのなら、あんな変態じゃなく俺自身に訊けばいいじゃないか。


「謙也さん、少し黙ってください」
「お前がアホとか言うからやろ!」
「……煩いっすわ」


ぎゃんぎゃん騒いだままの謙也さんに顔を近付けた。背伸びをしてしまうのは、悔しいかな身長は負けているからだ。




からあげ弁当のお味












謙也にでれでれな光はどこにいますか………………?

2011/8/22
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