「ねえ、いい加減諦めなよ」

ミクオはソファに沈み込ませたアカイトの苛立った赤い目を見返した。感情が剥き出しの瞳となにも映さないガラスの瞳。真逆だなあと考えながら、ふたりの距離を縮ませた。

「ね、何が気にくわないわけ。僕はあーくんを大事にするし、絶対に悲しませないよ」
「うるさい」
「痛い思い、させたりしないし泣かせない。あーくんだって受け入れてきたじゃん」
「うるさい、黙れ」

アカイトは変わらずミクオを睨み付けていた。弱らない強い視線はミクオがアカイトを気に入る要因のひとつでもあるのだが、今それを向けられるのは少しばかり厳しいものがある。
アカイトにそんな目をさせているのが、ミクオではないからだ。ここにはいない一人の男がアカイトを縛り付けてやまないから、彼はミクオのものにならない。だからミクオはかなしかった。

「……あいつ、言ってたじゃん。好きな子がいるって」
「……関係ない。俺が諦める理由にはならねえよ」
「……ぼくじゃだめなの」

アカイトの眉間の皺が増えた。苛立ちからではなかった。アカイトの顔に浮かぶそれは相手を気遣う表情だ。ミクオが一筋の涙を流したからだった。
アカイトはやさしい。無理矢理自分を引き止めようとする男にも、その優しさを与えてやる。それが残酷だと、ミクオは声には出さず思う。アカイトが振り向いてくれないのが悔しい。それをわかっていて好きでいるのをやめられない自分が悔しかった。



かずらは結ばれない











あーくんの片想い相手はマスター

2011/8/6
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