※柔蝮の子
おとんも、おかんも、なんや難しい仕事に就いてはるわりには家ではちっともそんな雰囲気を出さない。おかんがちょっとした事で維持張って、それをおとんが笑顔で宥める。そんな毎日。
そこにたまーに、おとんの弟、つまり俺の叔父さんが加わる事がある。金髪の兄ちゃんと、最初は頭沸いとんかと思った桃色の髪の兄ちゃんの、ふたり。その桃色の方が、俺の初恋の相手やった。
「なんや、坊はこんなとこにおったんか」
「廉造。いつ来たん」
「こら、歳上を呼び捨てにしたらあかん」
陽は既に暮れて黄昏時を越えた。ただでさえ悪魔共が活発になりやすい時間にふらふらと俺は出歩いて薄暗い公園にいる。たぶん廉造は、俺を探しに来たんやろう。
咎めるような苦笑をしても、廉造はそれ以上なにも言わない。ブランコを揺らしてた俺の隣に立った廉造が、おもむろにもうひとつのブランコへ飛び乗った。
「ブランコかあ…なっつかしいなあ。ガキん頃によぉ乗っとったわ」
語りかけるみたいな、独り言かもしれない言葉に廉造を見た。かすかな電灯の灯りに照らされた廉造の横顔はとても眩しい。見ていられなくて視線を剥がした。
きぃ、きぃ、物悲しい金属音が耳についた。
「感傷に浸っとるとこ悪いけど、リストラされたリーマンみたいやで」
「お前……相っ変わらず素直やないな」
呑気な声に、なんとなく俺は泣きそうになった。
破れた恋
ただの自家発電
柔蝮の息子→廉造とかどんなマイナー?でも好き
2011/7/29