※年齢操作



「あれ、白石?」
「もしかして、謙也か?」


偶然とは恐ろしい。程好い酔いから目覚めながら、蔵ノ介はそう思った。大学のサークルの二次会をしていたら昔馴染みに見付かったのだ。しかも叶わなかった恋の相手となれば、酒も抜けていくというものだ。
ひとつ断っておくが、蔵ノ介は既に成人している。という事は謙也も飲酒、喫煙を許される年齢になるのだが、果たして謙也は中学時代から何ら変わってなどいなかった。僅か成長したのみの謙也が、酒の力を借りて記憶の中から抜け出したのかと錯覚を抱いた程だ。
学科の先輩に無理矢理連れてこられたせいで落ちきっていた気分が上昇していくようだった。笑顔を浮かべ、会話を続けようと試みた。


「おい蔵、知り合いか?」
「……ええまあ」
「なに、冷たいわね。こんなイケメン知ってたんなら紹介しなさいよっ」


しかし回りが放っておく筈もなかった。何しろ酔っ払いの集団である。男好きで有名な女子が名乗りをあげると、普段はおとなしい女子までもが謙也に声をかけ始めた。あまつさえその腕を取ろうとする始末だ。抑圧していたものがある分、蔵ノ介の機嫌はあからさまに悪くなった。
他の知り合いならば我慢できる。だが謙也は駄目なのだ。謙也にとって蔵ノ介はただの同輩に過ぎないだろうが、蔵ノ介にとっての謙也は離れていた今も心の支えで、侵されたくない聖域と言ってしまっても過言ではない存在だ。
生涯伝えはしないけれど、一方的に依存しても悟られなどしない、都合の良い相手。
こういってしまえば悪い印象しか残らないが、昔の自分にはもたれ掛かれる誰かが必要だった。その想いを断ち切れぬまま離れてしまった、それだけの事だ。それだけの。


「先輩方。すみませんけどここで抜けさせてもらいます」


それでも無理なものは無理だと、蔵ノ介は大袈裟に声を張り上げて立ち上がった。予め伝えられていた会費をビールジョッキのそばに置き、わやくちゃにされかかっていた謙也を引っ張って出口へと向かう。ブーイングがわいたけれど、謙也は何も言わないままで蔵ノ介のあとを歩いていた。











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