跡部の目は、ガラス細工みたいにきれいだ。覗き込むときれいな青が見える。その中に、ちいさな俺も写って見える。それを嬉しいと思う。跡部に閉じ込められてしまったみたいで、それがやけに嬉しいんだ。
だって、跡部に捕まえられたら、死ぬまでずっと近くにいられるだろう?
それはきっと、いや絶対に幸せだ。

「ジロー、少し離れろ」
「え、なんで?」

放課後。部活も終わった遅い時間に、俺と跡部は部室に残っていた。跡部は部誌を書くために、俺はそんな跡部を待つために。どうにも遅くなってしまいそうだと暗くなる前にわかっていたらしい跡部は、既に樺地を家路に辿らせていた。
部誌はいつものとおり、練習内容と部員の直すべき癖とか、気が付いたことが書かれている。ほとんどはもう跡部の綺麗な字で埋まっていて、残り数行でペンは止まっていた。俺が邪魔をしているからだ。

「お前もわかってるだろう。これの後にだって仕事はあるんだ」
「でも、俺はおめぇが足りない」
「……あとでいくらでも構ってやる」

いくらでも、それは魅惑的な響きだったけど今は譲れない。掴んだ跡部の腕は細い。そりゃ筋肉はあるけれど、にしたって、細すぎやしないか。

「跡部さ、最近ちゃんと食べてる?」

あ、黙った。どうやら図星だったみたい。跡部は自分を追い込むと食べなくなる癖がある。今回もそれのようだ。意味を成さなくなったペンを取り上げて、かわりに俺の手をそこに置いた。

「何があったかは訊かないよ」
「……」
「でも、跡部が誰かに聞いて欲しいなら、それは全部俺が聞くから」

他の誰にも聞かせたくない。勝手な俺の勝手な独占欲に、跡部はよわくよわく微笑んだ。儚くてうつくしい笑顔だった。



ガラスのなみだ






ジロ跡すきすぎてつらいのになかなか見つからない涙目

2011/7/11
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