いつものように授業を終え、いつものように部室に行くとジローが正座させられていた。いつになく空気がピリピリしていて一瞬思考が停止した。なにをしたんだジロー。
「あー、岳人だ」
「慈郎…」
誰が見ても怒られてる張本人のジローは至ってマイペースで、跡部の機嫌が急降下していた。こめかみがぴくぴくして、珍しく自分で制裁を加えてた。あーあー、馬鹿じゃねーのジローのヤツ。跡部のぐりぐりは意外と痛い。やられたジローは「いってー!」なんて間抜けな悲鳴をあげていた。
「ゆーし、これどうなってんだ?」
「さてなあ…、俺もさっき来たとこやし、よぉわからんわ」
「んだよ役に立たねーな」
「がっくんたらヒドイわッ!」
うるさい、俺の質問に答えられないなら用はないのだ。無視を決め込むとハンカチを噛んで悔しがるフリをしていた。ゆーしまじきめえ。
「向日、こっち来い」
俺を呼んだ跡部は、いかにも心労が溜まってると言わんばかりに頭に手をあてていた。樺地が心配そうにそれを見る。ジローはまだ自分の頭を撫でていたから、りあえず可哀想なものを見る目で見ておいた。
「なんだ?俺何かしたか?」
「向日お前、明日慈郎に着いて歯医者に行ってこい」
「はあ?俺、虫歯なんてないぜ?」
跡部が溜め息をついた。それはそれはふっかい溜め息を。なんだその反応。マジ意味わかんねえんだけど。
「虫歯があるのは慈郎なんだよ。だから付き添えって言ってんだ」
予約はしてあると言う跡部にジローを見ると、なるほどヤツの頬は腫れてるように見えなくもない。けど違う。俺は、それがどうして俺の役目なんだって訊いてんだよ。
慈郎くんの虫歯
たぶん前編
氷帝陣のキャラはよくわからん
2011/6/23