部活も引退した冬の放課後、やる事もなく裏庭をぶらぶら歩いていた。ここにも幸村が育てていた植物があるのだ。それを見に行く途中、携帯が幸村専用の着メロをけたたましく奏でた。

「おう」
「音楽室で待ってるからすぐ来てね」
「へ?」

居場所だけを告げた電子機器はすぐに役に立たなくなった。幸村が電話を切ったからだ。言う事があるのなら電話で言えばよかろうものを、どうして俺が行かにゃならんのだ。文句は多々あるが、なにしろあの幸村だ。仮に聞かなかった事にして帰ってしまえば、それこそ後が怖い。何も考えずに指定された音楽室へ向かう事にした。




「やあ、遅かったね」
「……これでも、走って来たんじゃけど」
「あはは、お疲れさま」

きれいな顔は微塵も悪いと思っちゃいない。いちいち腹を立てては身を滅ぼすとわかっていたから、ただ溜め息だけで済ませた。幸村は、グランドピアノの近くにいた。黒光りするピアノをその手で撫でている。

「なん。急ぎの用でもあるのかと思えば」
「用ならあるよ。仁王に会いたかった」

労るように頬を白い手が撫ぜる。好きなようにさせておいて、窓の外の夕陽を見た。この音楽室は日が暮れると、うまい具合に太陽を拝めるのだ。確か告白スポットにでもなっていた気がする。ここの真ん中の窓から夕陽が見えるちょうどの時に、想いを告げると永遠に結ばれるとか、そういった陳腐な伝説。参謀が気紛れにそう聞かせてくれた事をふと思い出した。

「……幸村」

まだ俺の頬にあった手を掴んだ。被せるように俺の手で、幸村の両手を腰に回させる。同じように、幸村を抱き締めた。力は込めず。やんわりと。

「好いとうよ」

真ん中の、窓。それがどれとはわからないが、少なくともこの位置からは、太陽が真ん中の窓の中にあるように見える。俺は幸村と永遠にいたいのかどうかを考えながら、嬉しげな声を聞いていた。





オレンジより濃い恋心



幸仁だいすき
本命カプで言えばネコちゃんどうしですが!好きなんだ!

2011/6/20
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