四葉環birthday

(となりのキミIF)

「いいんちょ、はやく」

にこにこと意地の悪い顔で頬杖を突きながら言う環に、テーブルひとつ挟んで向かい側に座るなまえ は真っ赤な顔で唸る。
今日4月1日は元クラスメイトであり、彼氏となった四葉環の誕生日である。それを祝う為になまえの自宅で数量限定の巨大王様プリンを食べる事になったの、だが。

なまえの手には銀色のスプーン。ちなみに抽選で当てた王様プリンのスプーンなので、頭には王様プリンのキャラクターが象られている。当たった時は2人で大はしゃぎしたが……それは蛇足だろう。
そして目の前には口をあーっと開けて待っている四葉環。
もうお分かりだろうが、四葉環はなまえにらぶらぶカップルによくありがちな「あーん(はあと)」を所望しているのだ。

けれど自宅で2人きりの部屋とはいえ、そんなベタな事が恥ずかしいなまえはスプーンに乗ったプリンをフルフルと震えさせるのみで、動けずにいた。

「はーやーくーー」
「わ、分かってる、けど……」
「けどー?」
「恥ずかしい……」

うん、知ってる。
そんな分かりやすく真っ赤になってくれるんだから、からかい甲斐があるというものだ。

「ちゅーとどっちが恥ずかしいんだよ」
「どっちも!!!!」

また顔を赤くする可愛い可愛い彼女に、環の心が満たされていく。いいな、誕生日。最高。
だけどこれ以上からかい続けると拗ねてしまいそうだ。今日のところはここら辺にするとしようか。

そう思ってると、向かい側に座っていたなまえがいつの間にかススス、とスカートと床が擦れる音を小さくたてながら隣に近付いてきていた。
恥ずかしがり屋な彼女の意外な行動にすぐさま反応出来ずにいると、右手でスプーンを自分に差し出し、左手で落ちても大丈夫なように下に添えて、

「あ、あーん」

あまりにも恥ずかしいからか、眉間に凄まじい皺を寄せていて、意図せず険しい顔になっている。

(あー……ほんと、いいんちょって)
「んっ、!?」
「ほんと、好き」
「ちょっ、あの、プリンは!?」
「プリンより、いいんちょがいい」

スプーンを持っていた右手を掴み、その可愛い唇を奪うと驚きで目を開く彼女。自分で言った言葉に、心の中で本当にその通りだと納得する。
あんなに楽しみにしてた巨大王様プリンが、今では目の前の彼女にしか目がいかない。

なまえに触れたくて、触れたくて触れたくて、たまらない。

「た、環くん、危ない、から」
「じゃあ……」

彼女の手にあったスプーンの上のプリンをぱくりと口に入れ、スプーンをテーブルの上に置く。

「これでいい?」
「……口にプリン付いてるよ」
「とって」
「とって!?」
「とっ、て」

ぐいぐいと彼女に迫ってると、いつの間にか彼女は床にほぼ横たわる形になる。
彼女のスカートが捲れている。その露わになった太ももが、真っ白で、触り心地が良さそうで、興奮する。

「ちゅー、してよ」

熱の篭った視線に、なまえは異様な雰囲気も感じて、大丈夫かなこれはと思う理性と共にこの雰囲気に呑まれてその熱い吐息を漏らす唇に口付けをしてしまいたいという謎の感情が顔を出す。

自分に覆い被さる彼の顔は、影が射していても分かるくらいに赤くなっていて、それは照れるとか恥ずかしいからとかいう類の物ではなく、興奮から来るものだろうという事がなんとなく分かった。
どっ、どっ、と鳴る自身の鼓動を感じながら環の頬に手を添える。熱くて、熱さを感じてしまったせいで、欲望に支配される。

そしてどちらともなく目を閉じ、口付けをする。
それもいつもの優しくて心の落ち着く物ではなく、少し乱暴で、すごく深い口付け。
舌と舌が絡み合う。ざらりとしていて、ぬらりとした感触が、どうしてこんなに気持ち良いのだろう。

「18歳の誕生日、祝ってよ」

少し荒くなった息をしながら言う彼の言葉が、もう朦朧となった意識のなかでは半分以下しか理解出来なかったけれど、なまえは頷き大好きな彼の、唇に口付ける。

そして首筋に口付けを落とす彼の頭を撫でながら「誕生日、おめでとう」と優しく囁いた。


誘 惑 の 味
Taste of temptation.



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