体育館マジ寒い。
 冷えきってしまった手を、スラックスのポケットに突っ込む。
 冬休み明け、始業式はしょっぱなから非常に退屈である。棒立ちで話聞くだけだし。サボらずにちゃんと出席してる俺ってえらい。
 ストーブの効果をまったく感じられない真冬の体育館には、誰が聞いているのかわからない校長の退屈な話がマイクを通して延々と流れている。館内をゆるりと見回してみると、案の定校長の話をBGMにしていくつもの頭がふらふら船を漕いでいた。てか教員の列、誰か寝てんじゃん。つかあれ教頭じゃん。
 隣のクラスのほうへ視線を向けてみたら、美香ちゃんを発見した。自慢の双子の姉である。金髪のロングヘアを今日はふたつに結んだ美香ちゃんは、今日も世界で一番、最高かわいい……。

「みーよーしー」
「イッテ!」

 恍惚に浸っていたら、いきなり背後から頭をひっぱたかれた。振り向けば、担任のオッサン先生が眉間にシワを寄せて俺のことを睨みつけている。

「ちゃんと前向け、前」
「俺ちゃんと起きてんのに……。てか、俺のことより教頭注意したほうがよくないすか。ほら、あれぜったい寝てんじゃん。船漕ぎまくってんじゃん」
「……三好、帰り指導室な」

 パンパンと俺の頭を叩いて、先生は教員の列へと戻っていった。
 話そらしやがって、大人ってずるいよね。
 ブリーチのしすぎでかなり傷んだ自分の髪を一束摘まんだりしながら、胸のうちで愚痴をこぼす。
 仕方なく、視線を前に戻した。校長の話は依然として終わる気配がない。

「…………」

 こういう場になると、いつも真っ先に船を漕ぎ出す長身の茶髪頭が、今日はない。
 あれはたしか夏休み明けの始業式のあとだったか、教室へ帰るとき、「背が高いってこういうとき不利だよねー」なんて、俺とそろって先生にゲンコツを食らった頭を擦りながら愚痴っていた姿を思い出した。

(今日、なんで休みなんだっけ)

 ああ、そういえば、今朝のHRで先生が発熱だとかなんとか言ってたような。
 年明け早々フラれるわ、学校しょっぱなから熱出して休みだわ……俺の友だち、日向遥は残念すぎる。

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