いいかげん買おう、ダブルベッド。
「けーたはベッドから落ちるのが得意なフレンズなんだね」
俺を見下ろしながら海未がにやっとする。
誰がフレンズだばか。好きで落ちてるんじゃねーわボケ。
「あー、もう……下の階のやつが苦情言いに来たらおまえのせいだからな」
「なぜなの? けーたが三日に一度、勝手に落下してるんじゃん」
「……うっさい」
打ち付けた腰を擦りつつ、海未を端に寄せてベッドへ舞い戻る。せっかくの休みだというのに最悪の目覚めである。
シングルベッドに大人二人はキツい。
とはいえ、海未は案外寝相がいいのだ(解せない)。海未のご指摘の通り、ぐうの音も出ないほど、どっちかというと悪いのは俺だった(マジで解せない)。海未はじょうずに、それこそまるで猫のようにまるくなって眠る。ソファをベッドにしていたときも、そういえば海未が落ちていた記憶はない。
「ダブルっていくらぐらいすんだろ……あー、でもこの際だから、もっとでかいサイズ買おうかな……」
「けーた、キングサイズ買うの? そうなの?」
「ああ……いいな、キングサイズ……この狭い部屋に入んないだろうけど」
「あのね、あたしはね、あたしの誕生日に泊まったホテルぐらいのベッドを所望するよ」
「だから部屋入り切らんて」
スマホを掲げて、寝ながら通販サイトを開く。それをいっしょになって見ているような、べつにそうじゃないような、とにかく、海未が俺にくっついてくる。
「むふ。けーた、ちょうどよい体温」
「……あ、そ」
まあ、まだしばらくはいいか、このままで。
それとなく通販サイトを閉じて、寝相が良くなる方法をググってみる。ぬくくて平和な午後一時。
『狭いベッドに二人』が好き (4/5)
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