01

シャツは出っ放し、ネクタイはゆるゆる。

耳には派手なピアスが何個もついていて、おまけに髪は太陽のごとくオレンジ色に近い茶髪に染められている。

「日下部くん、何度言ったら分かるんですか!校則違反しすぎ」
「うるっせえな。誰にも迷惑かけてねえし」
「私が迷惑します!今日という今日は許さないから」

生徒指導室で反省文コースだと言うと、彼は面倒くさそうに顔をしかめた。

「反省文とか…書いても書かなくても一緒だろ」
「駄目です。放課後きちんと日下部くんの教室まで迎えに行くから」
「そこまですんのかようぜえ」
「途中で帰ったりさぼったりしたら、反省文二倍にするわよ」
「へーへー分かりましたよイインチョウサマ」

…本当に分かったのかな。放課後待ちぼうけくらっちゃったらどうしよう。

「委員長、チェック表貸してください」
「あ、はい」

ぼーっと考え事をしていたら、他の委員に不思議がられた。いけないいけない。集中しなきゃ。

次の生徒がやってきたため、慌てて服装チェックを再開する。

全く皆スカート短すぎよ。そんなに足を出して、一体誰に見せるの。

「…」

ちらり。気だるげに校舎に向かっているオレンジ頭を眺めて、私は溜息を吐いた。

私、おかしくなかった?どもってなかった?普通に話せた?

…日下部くん、今日も格好よかったな。

* * *

「いーんちょー」
「えっ、日下部く…」

ざわり、と教室が少しだけざわめく。日下部くんが入口にもたれかかるようにして、私の名前を呼んだからだ。

彼は学年の中でも一際目立つ存在で(勿論良い意味ではなく悪い意味だけど)、関わりたくないと思っている人間が大多数だろう。

そんな人が怖い顔をして立っていれば、そりゃあ驚くよね…私でも一瞬肩が跳ねたし。睨まないでよ日下部くん。

「おっせえんだよ。俺もう3分も待たされてるんだけど」

3分て。

「今HRが終わったばかりなんだから、仕方ないでしょう」
「そんなの知らねえ。委員長が迎えにくるって言ったんだろうが。ちゃんと約束守れよ」
「理不尽な…」
「早くしろ。反省文とかさっさと終わらせて帰りたい」
「あ、待っ…」

ばたばたと帰り支度をして彼の後をついて行く。

クラスの人からは憐みの目線を向けられているような気がしたけれど、私の心の中はうきうきと弾んでいた。

これから、日下部くんと二人っきりだ。

誰にも邪魔されないで、二人だけの生徒指導室。周りのことは気にしないでいい。でもうまく話せるかな。


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