頭が締め付けられるように痛い。くそ、せっかくの休日なのにこんな調子じゃゆっくり羽を伸ばそうなんて夢のまた夢だ。

昨日お風呂上がりに髪の毛を乾かさないまま寝たのが悪かったのだろうか。それとも調子に乗って酒なんか煽ったせいか。

思い当たる理由は沢山ありすぎて、僕は考えることをやめた。もういい。寒気もするしこのまま寝よう。

「あら、起きたの?おはよう」

とろとろと瞼を落としかけたところにそんな声が聞こえて、カッと目を見開く。

「…なんで」
「なんだっていいじゃない」

私がここに居ることに理由なんか必要だったかしら。そんな風に言われれば返す言葉もなく。布団から目線だけを動かして、彼女のツンとしたすまし顔を視界に入れた。

「体調が悪いの?」
「頭が痛い」
「それは大変。何か食べられる?」
「…サトコさんの料理以外なら」
「失礼ね。この間はちょっと失敗しただけよ」

僕のおでこに彼女の気持ち悪いくらいすらりとした手が伸ばされて、そっと体温を測る。愛の力で頭痛が和らぐ、なんてそんな陳腐な奇跡みたいなことはもちろん起こらない。

その手をとって指を絡ませると、サトコさんは少しだけ目を細めて笑った。

「病人のくせに、随分いやらしい手つきね」
「ちょっとね」
「そういう気分?」
「君の手が悪い」

指先から伝わる淡い熱。気だるい体と痛む頭。決して心地いいとは言えないその感覚が、どうしてか無性に甘美な気分にさせる。平たく言うと、つまり僕は何故かムラムラしているのだ。

「残念。今から予定があるの」
「それはどうしてもはずせない用事?」
「あら、そんなにしたいの」
「別にそんなことはないけど…」
「申し訳ないけれど、私じゃなきゃできないことなのよ」

もごもごと歯切れ悪く呟く僕のおでこに一つ。ちゅっと音を立ててキスをしたサトコさんは、立ち上がる。

「おかゆなら食べられるでしょう?」
「ええ…?ああ、うん」
「作ってあげる」

私にしか作れないような、とびきり美味しいおかゆをね。

いたずらっ子のような表情をして部屋を出て行く彼女。ひとり残された僕は、熱にうかされた頭で理解した。

ああなんだ、「はずせない用事」ってそういうこと。

(20140401~20140430 拍手お礼文)

愛情と悪寒と手料理


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