other | ナノ

焼けた背中が痛い。……いえ、痛いなんて表現じゃ済まされない。苦しい、気分が悪い。

当たり前じゃない。それでもこの錬成陣を消したいと望んだのは私で。焼いてくれたのは紛れもなく彼だ。
死なない程度に焼くことも可能になってしまったと自嘲気味で笑う彼に焼き消してほしいと頼んだのは私なのになんだか殺意がわいてしまった。私の背中の焔は既に醜く変化し誰にも解読は出来ないだろう。

……イシュヴァールの悪夢が終わり、自分の家で眠るようになった。私は士官学校を卒業し、明日には新しい配属先でさっそく仕事が始まる。

人を殺すことは怖い。それでも、己の決めた信念は揺るぐことがなかった。あの日最後に見たあの人の瞳は焔が点いていたからだ。

ならば私は引金を引こう。どんな理不尽なことでもそれを背負うのは私たちだけでいいように。


偽善だろうが綺麗事でもいい、それでも次の世代の人間が笑って過ごせるよう。




「……っ」



痛む背中を叱咤し広い屋敷のキッチンまで這いずるように着けば、水道の蛇口を捻りグラスに溢れるくらいの水を入れる。無我夢中で飲み、落ち着いた私はテーブルの上に置かれた書類をちらりと見た。

……そこに書かれた長ったらしい文章を省くと、明日からロイ・マスタング中佐の元に配属先が決まったという通知だ。

士官学校卒業前に教官に願い出たことだ。まさか叶うとは思ってもなかったけれど。

とにもかくにも彼の直属の部下になれる。
彼の為すべきことを私は隣で支えられる。


……そして、何処まで焔が続くか見ていたい。そしてもし違う炎が混ざったとき、私は彼を殺そう。


焔を消す。


そして私も一緒に逝く。


焔の錬金術をなかったことにしよう。それが残された私の課題なのだ。


手の中のグラスを割れそうなほど握り締めた。






彼を護ること、彼の命を握るのも私だけ。それだけは誰にも譲らない。







090817
>>160314

鋼の錬金術師/ロイアイ
昔のサイトに上げたもの…。





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -