「吉田サン」
「ん…フィリップ…?あれ、おれ、寝ちゃってたのか…?」

辺りを見渡すと、鷹の爪団の自分の部屋、それもベッドの中に居た。
どうやら深夜の作戦会議中寝入ってしまった自分を、フィリップがわざわざここまで運んでくれたらしい。

「今日はもう、このまま、眠っては どうですか?」
「そうだなあ…」

吉田はもう一度、起こした身体をゆっくりと布団へ沈めた。

「お前が、また昔みたいに添い寝してくれるなら、考えてやってもいいぜ?」

顔まで布団を引き上げてボソボソと言った吉田の頬は赤い。
マスクをしていない今、それがはっきりと伺える。

フィリップは、珍しくにこりと微笑みを浮かべると、少々遠慮勝ちに吉田の布団へと潜った。

「吉田サンは、昔から俺を釣るのが、上手いです、よね」
「? そうか?ま、フィリップはおれの子分だからな」
「こ…子分…」
「なんだ?不満か?」
「い、いえ」

吉田は渇いた笑い声を溜め息の様に洩らした後、力強くフィリップにしがみついた。

ああ、昔に戻ったみたいだ。

互いに身を寄せ合って、眠りにつくまで他愛のない話をして、

東京に出て来てからは、いつの間にかそんなことをすることもなくなったのだけれど。

「フィリップ…」
「吉田、サン?」

胸に、吉田の顔が押し当てられる。
そこがゆっくりと湿って行くのがわかり、フィリップは眼を細め、吉田の薄っぺらい腰を引寄せた。

「懐かしいなぁ」

その言葉は、僅(はつ)かな後悔を孕んでいた。


(あのままずっと、二人で生きていたならば、きっと、こんなおもいも知らずに済んだのに、)


It is no use crying over spilt milk.




end




後書き



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