「…多串…」

最悪だ、
せっかく新ちゃんとらぶらぶ買い物デート中だったっつーのに。
なんでよりにもよってこの野郎と出逢っちまうかなぁ、、

「土方さんこんにちは。巡回中ですか?」
「ああ、お前は買い物か?毎日ご苦労さん」

多串テメェ、汚ぇ手で人のもんに勝手に触ってんじゃねーよ。
つーかお前も頭撫でられて何嬉しそうにしてんだよ。
銀さんというものがありながら、まじありえないんですけどー

「俺の新ちゃんに気安く触ってんじゃねぇよ」
「んだと?誰が誰のものだって?」
「何言ってんですか銀さん、すみません土方さん」
「あぁ…別にいいが」

だって、お前の一番は俺だろ?
俺だって一番はお前だし、
なのに何で多串なんか庇うんだよ。

「わっ!銀さん?!」
「おい待て!」

全部気に入らない、
これ以上多串の野郎と新八が会話出来ないように、手を引っ張って、万事屋まで走った。

「もう銀さん、いきなりなんなんですか?」
「………」
「銀さん?」
「いいか新八、これからはさっきみたいに多串に触られそうになったら逃げろ」
「……はい」
「多串だけじゃなくて、真選組の奴ら全員からもだぞ?」
「はいはい」
「それからヅラと辰馬とギリで長谷川さんも…あと…」
「はいはい」
「っ、絶対だからな!」

俺の自分勝手なわがままを、玄関先で新八にぶつけた。

それから新八は買い忘れに気付いてまた大江戸スーパーに逆戻りしちまったけど、今度は多串がいても、大丈夫だろう。
万事屋へ入ると、神楽が呆れ顔をして突っ立っていた。

「んだよ…」
「銀ちゃんもクドイ男アルな。あんまり束縛し過ぎると新八に愛想つかされるネ」
「うっせー。娘は黙って見守ってればいーの」
「言ってる場合アルか?もう愛想つかされてるかもしれないヨ」
「………」

俺、そんなに新八のこと束縛してたか?
あいつが俺以外の奴と楽しそうに笑ったりすっから。
新八は俺のもんなんだよ。
だからあれは当たり前のこと…でも、もし神楽の言うように束縛が嫌になって新八が俺に愛想つかしてたとしたら?

どうなんだ、俺。
あいつ無しで、生きていけるか?

「ただいま戻りました」
「新八、」
「あ、銀さん何ですか?また買い忘れなんて言わないで下さいよ〜?」
「あの、さ…今まで束縛ばっかして悪かった。これからはなるべくしないようにすっから」

沈黙が続いて、恐る恐る新八の表情(かお)をみると、きょとん、と、間の抜けた顔をしていた。
気づくの遅せえよっつてんのか?

「ぷっ」

え、な、なんでお前吹き出してんの、?
銀さん何かおもしろいことした?

「馬鹿ですね、アンタそんなこと気にしてたんですか?僕が一度でも、銀さんに束縛しないで下さい。って言ったことあります?」
「そりゃ…ねぇけど…」

新八がさもおかしそうに言う。
愛想、つかされてないのか?

「あのですね、束縛されるってことは、それだけ銀さんが僕を愛してくれてるって証拠なんです。だから僕は全然気にしてないんで、銀さんは今まで通りの銀さんでいて下さい」

目の前には、この世のものとは思えないくらいのきれいな笑顔が花開いていて、

「―――ッ、新八!」

思わず、力の限り新八を抱き締めてしまった。

「はいはい」

新八も俺の背中に腕を回してくれて、ぽんぽんしてくれた。
なんつーか、俺が聞き分けのない子供で、母親にあやされてる、みたいな気もすっけど、新八は確かに俺のことをちゃんと理解してくれていて、それが嬉しかった。

新八は束縛を愛の証拠と言ってくれたけど、やっぱ少しは治すようにすっか。

「ちっ。結局ラブラブかヨ。バカップルめ。おーい新八ぃ早く飯作れヨナ」
「はーい!遅くなってごめんね神楽ちゃん〜っ」

今度は、邪魔だと言わんばかりに俺を振りほどいて、別のやつのところへあわてて駆けていく背中を、穏やかな心で見守った。



後書き


 
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