「土井先生〜ご飯出来ましたよぉ」
「今行く」

味噌汁と魚の焼ける芳ばしい香りに、半助は、薪割りの手を止め、もうそんな時間か。と裏庭から家へ戻った。

「頂きます。…うん、相変わらず旨いな」
「どうもありがとうございます。土井先生と家で朝食を食べるのも久しぶりっすね」
「ついこの間秋休みだっただろ〜?」

そうでしたっけ?と笑うきり丸に、そうだ。と笑う半助。

忍術学園は冬休みに入り、また半助ときり丸二人だけの生活が始まったのだった。

「ねえ、土井先生。あとで一緒に町に出て一通りの食材を買い揃えませんか?」
「そうだな。必要な物は紙に書いて置くんだぞ」
「は〜いっ」


「その格好で行くのか?」
「もちろん!女装だといつもの倍サービスしてくれるんで!」

にーっと笑う

「私はあまり気乗りしないがな〜」
「なんでっすか?」
「そ、それはだなぁ…」
「変な土井先生〜」

あまり、きり丸の可愛すぎる姿を他人にみせたくない。などとは言える筈もなく、結局流されてしまった。

「四方八方しゅ〜りけん」
「きり丸、あんまりはしゃぐと転ぶぞ」
「はしゃいでないです〜」
「そんなことないだろう?」

子供のきり丸と自分がこうやって手を繋いで歩いていると、周りからは親子にみえるのかもしれない。

早くに両親を亡くしたきり丸にとっては、それが嬉しいことで、もしかしたら、望んでいるのかも。

けれど半助は、何れはきり丸と親子ではなく、恋人として、本物の家族になりたいと考えていた。

とは言えど、それには色々な問題点があるし、まだ恋人にもなっていないのだが…

町に着き買い物を始めると、早速有り得ないくらいサービスをされているきり丸に、半助は苦笑いした。

「兄ちゃんがこの子の父ちゃんか?可愛いねぇ!自慢の娘でしょ?」

味噌屋の親父が嬉しそうに話しかけてくる。
ピタッと停止するきり丸を横目にみて、半助は言葉を紡いだ。

「はい。とても自慢の娘でしてね。これがまた、器量もいい」
「ヘェ!そいつァ大したもんだ!」

味噌屋も上機嫌でサービスしてくれたが、少し大人しくなったきり丸の顔を伺って、半助は驚いた。

「きり丸」

先程の親父との会話を気にしているのか、きり丸の頬はとても可愛らしい紅に染まっていた。

若干俯き勝ちで、それがまたしおらしくみえた。

「どうしたんだ?」
「…別に、なんでもないです」
「、ならいいんだか」

買い物を終えて帰り道、どちらからともなく再び手を繋いで歩いた。

「さっきの、本当はちょっと嬉しかったです」
「、」
「ぼく…土井先生に、あんな風に言ってもらえるとは、思ってなかったから」

一瞬だけ、少し寂しそうな顔をしたきり丸を半助は見逃さなかった。

「当たり前だろ。」
「え…」
「お前は私の自慢の生徒で、私の自慢の」

はた、と半助は足を止めると、きり丸と視線を合わせ、きり丸の両手のひらを優しく自分の手のひらで包み込んで微笑んだ。

「家族だよ」

熱くなる、きり丸の手のひら。
泣き出しそうな、照れ臭そうな、驚いたような、なんとも複雑な表情のあと、この上なく嬉しそうな満面の笑みを浮かべ、きり丸は、半助に力一杯抱き着いた。

「…っ、ありがとうございます」
「お礼を言われるようなことじゃないよ」

半助も優しくきり丸の腰に腕を回した後、背中をポンポンと叩いた。

それからまた、二人仲良く歩幅を合わせ、手を繋いで、家路に着いた。

冬休みが終わるまでの間の、二人の楽しい生活を思い浮かべ、あたたかい気持ちになりながら。








****


大変お待たせ致しました、『ほのぼのした土井きり親子小説』でした!

あまりほのぼのしませんでしたが、親子な土井きり、少しは表現できていたでしょうか?

これからも土井きりには仲良くいてほしいですね!

それでは、リクエストありがとうございました〜!



2014.12.26
























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