新八は辺りを見回すと、人気の無い路地裏へと足を踏み入れた。
その暗がりに蠢(うごめ)く影が一つ。
「よぉ、待ってたぜ」
壁に背を預けたその影は、煙管(きせる)から、ふぅ と、白い煙を吐き出して、ニヒルな微笑みを浮かべた。
「高杉さん」
新八はその人物の名を愛しそうに口にして、微笑んだ。
二人は人目を忍んで静かに路地裏を抜け、江戸の外れにある倉庫街へ来ていた。
ここは二人が何時も人目を忍んで訪れる場所で、海岸は無いが、コンクリートで造られた堤防を越えれば、江戸には珍しく、海を見渡すことが出来た。
二人がこうして逢うのはもう何ヵ月か振りのことである。
すっかり見慣れた風景に違いを求めながら、新八は、きょろきょろと眼を泳がせていた。
「悪いな。何時もこんな所で」
「いいんですよ。僕はこうして高杉さんと一緒に居られるだけで幸せなんですから」
穏やかに波が打つような、その優しい声音と、本当に幸せそうに眼を細めて笑う横顔に、高杉は久方振りに胸が熱くなるのを感じてしまう。
全く冗談じゃねえ。
まさかこの俺が、あいつの手中に在るこんな餓鬼に"救われてる"なんてな、
少しの笑い話にもなりゃしねえよ。
高杉は、そう嘲笑気味に咽を鳴らすと、隣に腰を落ち着かせている新八の頭を掴んで自らの胸の中へ引寄せた。
「、」
夕日のせいか否か、頬を真っ赤に染めた新八を横目に映しながら、
俺もだ、
その固く閉ざされた口から、言葉を溢れさせて、ゆっくりと眼を閉じた。
こいつの笑顔が、声音が、
溶かしてゆく。
溶かしてゆく。
あの日 己から凍てつかせた筈の、心を。
20110208
アンケートでリクエスト頂きました、
『高杉×新八』でした!
高新いいですよね高新!
うちの高新は、
二人が逢っていることが
周りにバレないように、
いつも高杉が頑張っております(笑)
明るいらぶらぶには
残念ながらならなかったのですが、
如何でしたでしょうか…??
気に入って頂けましたなら
幸いでございます!
返品可能ですので、
返品したい場合はいつでも
お申しつけくださいませ★
それでは、
リクエストありがとうございました!
夏那祈