「あ、桂さん」

「おや、新八君ではないか。奇遇だな」

「そうですね。あれ、今日はエリザベスさんは居ないんですか?」

「ああ。なんでも秘密の用があるとかなんとかで」

「秘密の用?エリザベスさん事態が謎な物体なのに更に秘密を重ねてんですかあの人」

「そうなのだ…いや、エリザベスは別に謎な物体などではない!エリザベスはエリザベス以外の何者でもないのだ!」

「いや、わかってねーじゃねえかっ!説明出来ないからそうやって逃げてんでしょ?!」

「逃げてなどおらん。エリザベスはエリザベスだからこそエリザベスなのだ」

「す、すみません。ツッコんだ僕が馬鹿でした…」

「よいよい。ところで新八君、今暇かな?」

「? はい。買い物も済ませましたし、暇と言えば暇ですけど」

「では一緒に蕎麦でも食べに行かんか?丁度腹も減ったし、エリザベスの居ない今、一人で蕎麦を食わねばならんのがどうにも寂しくてな」

「ふふ、じゃあお言葉に甘えて」

ある日のお昼前、桂と新八は大江戸スーパーの前でばったりと出逢ってしまった。
新八は桂に誘われるまま、隣に並んで歩き出した。



「どうだ?旨いか?」

「はいっとっても!お蕎麦なのに麺がすっごくもちもちしてるし、お出汁も透き通ってて…こんなに美味しいお蕎麦があるなんて、びっくりしました」

「はっはっは スーパーの蕎麦は歯ごたえがないからなぁ」

「そうなんですよねー それに、こうやって川を観ながら外で蕎麦を食べるなんて、中々粋ですね」

「そうだろう。こうして食べると蕎麦も一層美味く感じる」

「確かに、…こんな素敵なお店を知ってるなんて、銀さんとは大違いだ」

くすくす笑う新八を観て銀時とさぞ仲がよいのだろうなと桂は思う。
もしかしたらこの新八君が、銀時の心を溶かしてくれているのかもしれないな、とさえ。

「銀時は、いい子を見つけたなあ…」

「桂さん?」

「いや、こっちの話だ。」

「? そうだ桂さん。また、一緒に来ませんか…?」

その一言に桂は驚いた。

「俺は構わんが、良いのか?銀時に叱られるぞ?」

「今日のこと、銀さんには内緒にしておきます。だって、僕だけこんなに美味しいお蕎麦を食べたって知ったら、きっと銀さん自分も食べに行くって、すっごく怒ると思いますもん」

楽しそうに笑いながらいう新八に、さしずめ二人だけの秘密という訳か、と、桂は小さく喉を鳴らした。

案外自分も、新八君のこの笑顔に救われているのかもしれないな、と空を仰ぎながら再び笑った。

「それもそうだな。そうなったら、節介見つけたお気に入りの店を滅茶苦茶にされてしまいそうで敵わん」

「でしょ?」

「ああ、ではまた一緒に来ると、指切りしようか」

「はいっ」

交わした指切りに、お互いに想いを馳せて。






「只今戻りましたー」

「遅ぇぞ新八ぃ。って、なんかやけに機嫌よくねぇかー?」

「そうですか?セールしてて卵が安く買えたからかなあ?」

相変わらず無自覚な新八は、首を傾げて考えたが、本当にご機嫌のようで、すぐに割烹着を着て遅めの昼食の準備に取り掛かる。

「?」

その後ろ姿に、銀時は腑に落ちないものを感じ、先程の新八と同様に首を傾げた。

「新八ぃ今日の昼飯何アルかー?」

「じゃーんっ! お蕎麦!」

「えぇーっ私もっと腹持ちのいいやつがいいアル!」

「俺はなんでもいい。新八、温麺にしてくれ」

「わかりました。神楽ちゃん、今日は僕の分も食べていいよ」

「キャッホー!どうしたよ眼鏡!気前いいナ!」

「ちょっとお腹空いてないだけ。あ、神楽ちゃん、もうすぐ出来るからお箸出したりしてくれる?」

「わかったヨ〜」

この時、銀時が抱いた腑に落ちない物を、銀時が知ることになるのは、もう少し先のお話。





20110927


このサイト初の、ちゃんとした桂新です!

0と1の狭間も、もうすぐ五周年なので、なにか新しいことに手をつけたかったのかもしれません。

普段から妄想はするんですが、文に出来ずにいるので今回は頑張ってみました!

私の中で、新八は誰にたいしても右側なので、マイナーな人でもいいから、もっとたくさんのキャラと絡ませたいです。

争奪戦とかももっと書きたい!笑

ということで、桂新、はじめてなのでちょっとぎこちないような気もしますが、最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました*


 
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