昨日は今日とは違う男が、今日は昨日とは違う男が彼女に声をかけた。彼女は可愛い、それは認める。だって事実なのだから。今までの“男”という性別に憧れていた彼女も素敵だったが、女らしさ(彼女は親孝行だと主張するが)に目覚めてきた最近の彼女は今まで以上に素敵だと僕は思う。この前ブルーローズさんが小さく言った「最近ドラゴンキッドの可愛さに改めて気付かされるわ」と言う言葉を聞き逃す僕ではない。なぜブルーローズさんの言葉限定なのかと言うと、それは彼女と同性だからだ。彼女と異性、つまり僕と同じ男性の場合は限りではない。同性愛と言うものも世の中には存在するらしいが、ブルーローズさんは同性愛主義者ではないので心配はしていない。何の心配か、それは勿論僕のライバルになるかという事である。もう既にヒーローとしてライバルだろうという指摘は場違いだ。僕が言っているのはヒーローとしてではなく、彼女を好きな一人の“男”としてライバルか否かなのだから。
話を戻そう。そんな可愛い彼女に最近余計な虫がつくようになったのだ。昨日も今日も彼女は見知らぬ男性に声をかけられた。僕は“偶々”それを目撃してしまった。男性は二人共彼女を遊びに誘っていた。まぁ、鈍感な彼女はそれはもう清々しいくらいきっぱりと断っていたのだけれど。…けれど、それだけじゃ僕は不満だ。だってその男性二人は、あろう事か彼女にべたべたと触れていたのだ!彼女は特に気にした様子は無かったけれど、僕にはそれで充分だ。何がって?あの二人に罰を与える理由の事だ。時間は夕暮れ時が良いだろう。多少人目があった方が都合が良い。僕はぎゅっと自分の手を握った。うん、出来る。しかしこれは彼女の為ではなく、彼女の事を好きな自分の為、つまりは自分勝手な我が儘でしかないのだ。そして僕は夕闇に紛れて朝を待った。
「ねぇ、折紙サイクロン」
「ドラゴンキッド殿。何でござるか?」
「昨日また殺人事件が起きたみたいだよ。嫌んなっちゃうよね、ボク達ヒーローが居るのに」
「そうでござるな」
「犯人は容疑を否認している、か…。とんでもない奴だねっ」
「…そうでござるな」
果たして彼女は僕の能力が擬態化だと覚えているのだろうか。まぁ覚えていたとしても、僕はこの事件とは無関係という事になっているのだから、彼女の脳内ではこの二つは結び付かないだろう。嗚呼なんて都合の良い話なのだろうか!僕は彼女に気付かれないように、小さく小さく微笑んだ。

僕達の赤い糸って、きっとどす黒いよね

一昨日の男が昨日の男に昨日の夕方殺された。でもこれは僕には関係の無い話。だから僕は、今日も昨日までと変わらず彼女を愛する。


title by 揺らぎ

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