太陽はまだまだ優しくない。肌を刺すような日差しと蒸すような熱気が、トレーニングで火照ったこの身体を苛める。はぁ、と彼女はため息を吐いた。その頬を汗が滑り落ちる。…冷たい水が欲しい。
「イワン、飲み物ちょーだい」
「えっ…?う、うん。はい」
素晴らしいくらいタイミング良く目の前に表れた彼に、彼女は挨拶よりも先に水分をねだった。彼は突然の言葉に少々びっくりしつつも、手に持っていたスポーツドリンクを彼女に差し出した。「ありがと」と一言呟いて彼女はそれを喉の奥に流し込む。ぷは、と息を吐いた彼女の頭を、柔らかいタオル包んだ。
「凄い量だよ、汗。ホァン、頑張り過ぎ…?大丈夫?」
彼の手が、タオル越しに頭を撫でる。彼女は顔を赤くしたが、初めから暑さで顔は赤かったなと気付いたので特に隠す事はしなかった。「大丈夫、全然平気!」と笑った彼女に、彼も釣られて微笑んだ。
「…ホァンは、何だか甘い匂いがするね」
「そう?ボク、自分で言うのもアレだけど、結構汗臭いと思うんだけど」
「うーん、何て言うのかな…まるで、汗で砂糖が溶けたみたい」
「ボクは砂糖じゃないよ!」
「え?ホァンは甘いよ?ほら、」

甘いチェリーパイを一切れ

「ね?甘い」
そんなのイワンにしか分からないじゃないか、と思ったが上手く声が出なかった。


title by 揺らぎ

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