可愛いだけじゃだめですか



シズちゃんは、素直だ。
自分の感情を我慢しない。
嫌な事は嫌だというし、すぐキレるし、暴れるし。
それで毎日毎日喧嘩しているわけだから、少しは我慢とか遠慮とかを覚えてほしいわけだけど。

「臨也ー、あまいもの食いたい」
「勝手に食べなよ、冷蔵庫に何か入ってるでしょ」

「臨也ー、テレビ見たいんだけど」
「俺仕事あるから、好きに見ててよ」

「臨也ー」
「なんだよもう」

シズちゃんは今暇なんだろう。それで構ってほしいわけだ。
それを隠しもせず、素直に甘えてくる。
仕事している俺を後ろから抱きついて、全身から構ってオーラを出している。
なんかしっぽ見えるよ?しっぽブンブン振ってるよ?
気のせいか、犬耳犬しっぽのシズちゃんが見える。

金の毛がふさふさな大型犬が全身でのしかかってくるのは可愛いけど、俺は今大事な仕事中なんだ。
だから遊んであげるわけにはいかないんだよ。
「待て、だよシズちゃん。仕事終わったら遊んであげるから」
「…わかった」
しっかり目をみて(しつけは目を見て行うのが効果的なんだって)、「待て」をすると、あからさまにションボリしたシズちゃんは、一人ソファに戻って行った。
そんなにションボリされると、若干罪悪感を感じないわけでもない。
心なしか、しっぽが小さくなった気がする。
ごめんねシズちゃん。
待てができるいい子なシズちゃんには、仕事が終わったらたくさんご褒美あげるからね!



「うー疲れた!」
ようやく仕事が一段落して、大きく伸びをすると、体中がぎしぎし言うのがわかった。
体全体が疲れているのがわかる。
ようやく拘束から解放された俺は、正直いますぐベッドにダイブしたかった。
でも、まぁそういうわけにはいかないよねぇ…

「臨也!仕事終わったのか?」
今うちには大型犬がいるからね。
ここまで待てをしておいて、さらに放置というわけにはいかない。
そんなことをしたら、ブチ切れて家を破壊されるだけではすまない。

「シズちゃん、待たせて悪かったね。プリン作ってあげるからちょっと待ってて」
「プリン!お前作れんのか。すげーな」
「あ、じゃあ作るの手伝ってよ」
おーおー喜んじゃって。
さっき以上にブンブンに振られたしっぽと、ピンピンにたった耳と、あふれんばかりの笑顔は、飼い主に褒められた時の犬そのものだ。
…うん、正直かわいい。
頭をなでてあげると、きょとんとした後、やめろよ!と真っ赤になってすねてしまったのだけど。



遅い夕ご飯と、二人で作ったプリンを食べて、俺は本格的に眠くなってきた。
ソファに座ってシズちゃんとテレビをいていたが、我慢できず目が閉じてしまう。
「臨也?眠いのか?」
「うん…ごめん、俺もう寝る…」
「じゃあベッド行こうぜ」
テレビを消し、シズちゃんにうながされるまま寝室に行く。
大きなベッドで、あったかいシズちゃんを抱えて眠るのは気持ちがいいだろうなぁなんて考えながら横になる。

と思ったら、シズちゃんがいきなりのしかかってきた。
「臨也…」
「なにシズちゃん、俺ねむいんだよ」
「臨也、いいだろ?」
「よくないよ…重いよどいて」
「なんでだよ」
「なんでも何もないよ。『待て』だよシズちゃん…」
「もう待たねぇよ」
「え、ちょっ!シズちゃん!!?」

ちょっと何この大型犬!!
待てしても全然聞かないじゃん。しつけも何もなってない!!
これだからシズちゃんは嫌なんだよ。
いい子なんて言った奴出てこい!

「昼のシズちゃんはわんこみたいで可愛かったのに!」
「わんこ…?何言ってんだよ。よく言うだろ?


 男はみんなオオカミだって」
「……っ!!死んで!!!」

 シズちゃんはやっぱり犬なんかじゃありません。
 ただの獣です。

リクエストありがとうございました。
シズ→→(←)イザだったのに、ほぼ両想い状態でした。すみません。
わんこシズちゃん書けて楽しかったです。
ちゃんとわんこになってますかね…?
わんこ=素直シズちゃんなイメージで書かせていただいたのですが、もっと気高い犬でもよかったかも?
いつでも書きなおししますので、言ってくださいね。
リクエストありがとうございました!