First Christmas


「シズちゃん!?」

駆け込んだのはシズちゃんのアパート。
古い木造アパートのドアを、勢いよく開けた。ばんっという音が響いて、しまったと思うが、それよりも先にシズちゃんの姿を確認したかった。

「い、ざや?」
そこにいたのは、ヴァローナの言った通り、顔を真っ赤にして苦しそうな、風邪で寝込んでいるシズちゃんだった…


「先輩、倒れました。風邪と聞いてます」
「は?」
その言葉を聞いた時、頭の中が真っ白になって、訳もわからず走り出していた。
風邪?倒れた?
思いもよらない展開に、頭がついていかない。
知らない、そんなの知らない。
俺の知らないところで、シズちゃんに何があったのか。
俺はどうして、何も知らないのか。
街の幸せな空気を突き破りながら、俺はただただ走って行った。


そうして着いたシズちゃんのアパート。シズちゃんは本当にベッドで苦しそうにしていた。
それまでの衝動的な感情が抜け、力なくベッドに近づく。
「臨也、なんできた…」
ガラガラの声で何とか言葉を紡ぐ姿は痛々しい。膝をついて目線を合わせると、俺を遠ざけるように手を降る。
それが今は無性に悲しい。

「ヴァローナに聞いた。言ってくれれば看病に来たのに…」
「お前にうつしたくねえ」
「っ!だからって嘘つかないでよ!俺、すごい不安で」
「…わりい」

俺のことを気遣ってくれたのは嬉しい。だけどそんなことより、本当のことを言ってくれた方が、傍に呼んでくれた方が、ずっとよかった。
涙混じりの声でそう告げると、申し訳なさそうにそっと頭を撫でられる。

「クリスマス、せっかく約束してたのにわりい。
正直に言えば、お前絶対来ると思って…うつしたくねえし、何よりかっこわりい」
「ばか!俺がそんな簡単にうつるわけないだろ!それにシズちゃんのカッコ悪いとこなら、今までたくさん見てるよ!」
「お前な…」
だってどれだけ一緒にいると思ってるのさ。シズちゃんのかっこいいところも、かっこ悪いところも、全部知ってるよ。
だから。

「そんな理由で、俺を一人にしないで」
嫌だったのは、クリスマスを一緒に過ごせないことじゃない。
嘘をつかれたことでもない。
何も知らされず、シズちゃんから離されたことなんだよ…

頭を撫でていた手がそっと頬に触れる。
「もう離さねえよ」
「うん」
その手に自分の手を重ね、ほっと息をついた。


が。
「ちょ!シズちゃん手めちゃくちゃ熱い!」
おでこに手を当てると、信じられないくらい熱い。これは、もしかしてものすごい重症なんじゃないか?
「ちょっと待ってて、タオル用意するから!ご飯は食べた?薬は!?」
食ってねえ、と言うセリフがゴホゴホと咳き込む中で微かに聞こえた。
あーもう!そう思いながら、俺は鍋に火をかけた。
やっぱり俺には臨也が必要だな、なんて調子よく言ってるシズちゃんに、クリスマスプレゼントは何をねだってやろうかと考えながら。



更新遅くなってすみません!
クリスマスでも普通にいちゃいちゃさせるのもと思い、大好きな風邪ネタにしてみました。
力不足がいなめません。
読んでくださり、ありがとうございました。