君は変わらない


シズちゃんショタ化。小五くらい。


 突然ですが、シズちゃんがちいさくなりました。


 理由?まぁ俺が原因とだけ言っておこう。
 いつも煮え湯を飲まされてるシズちゃんを、何とか大人しくさせたいと思ったんだけど。

 これは予想外だったなぁ。


「いざや、いざや。仕事大変なのか?」

 か わ い い

 遠慮がちに俺の服を引っ張る手とか、不安げに揺れる瞳とか、俺の肩にもみたない背とか、子供らしくふっくらとした頬とか。
 とにかく、これがホントにシズちゃんなの?と思ってしまうほど可愛い。ああ、どうしてあんな風になっちゃったんだ、シズちゃん!


「いざや?」
「あ、ごめんね。仕事もういいや。ご飯何食べたい?」
「…いざやの好きなもので」
「遠慮しなくてもいいんだよ?」
「…ハンバーグ、目玉焼きのったやつ」
「りょーかい」

 いきなり知らない人間に連れてこられて不安だろうに、シズちゃんは驚くほど大人しかった。
 それがまたかわいく新鮮で、ますますシズちゃんにめろめろになっていく。
 ハンバーグだって!かわいいなぁかわいいなぁ。


 冷蔵庫を確認すると、材料はあるもので何とかなりそうだ。料理なんてほとんどしないけど、せっかくなので作ることにした。
 シズちゃんにも手伝ってもらおう。
 そう思ってシズちゃんに声をかけると、嬉しそうに駆け寄ってきて、「何すればいいんだ?」と聞いてきた。
 やばい、鼻血でそうだよ俺。可愛すぎて死ねる気がしてきた。

 さすがシズちゃんというべきか、力はすでに俺よりあったので、ひき肉をこねる作業をお願いした。危なくないしね。
 俺はその横で玉ねぎをみじん切りにする。
 ドンドンと肉をボールに叩きつけているようだが、ボールは大丈夫かな?

 なんてよそ見していたのがまずかった。
「いたっ」
 人差し指を切ってしまった。傷は結構深いようで、血がたれてきたので、玉ねぎにつかないように慌てて自分に引き寄せる。

「いざやっ!切ったのか?」
「大丈夫だよシズちゃん。消毒すればすぐ治るから」
 血相を変えて俺の手を掴むシズちゃんは、本当に心配してるみたいで。
 誰かに心配なんてされたことのない俺は、えらく感動してしまった。しかもあのシズちゃんにだから、余計に。

 感動で涙が出そうになりながら、切ったのとは反対の手でシズちゃんの頭をそっと撫でる。茶色の髪が手に馴染んで気持ちいい。
 するとシズちゃんは、掴んでいた俺の手をそっと口元に持っていき、指をぱくっとくわえてしまった。

「しっシズちゃん?」
「しょーどく」
 傷口を舐め、そのまま指全体を唇でなぞると、ちゅっという音をたてて口を離した。
 これは「傷には唾つけとけば治る」なんてレベルじゃない。だっていまのは、まるで…
 真っ赤になったまま固まる俺に、今までとは違うにやりとした笑顔でシズちゃんは言った。


「油断したらダメだろ?いざやくん?」


 子供になっても、シズちゃんはやっぱり予想外だ。
 油断しちゃいけないのは怪我じゃない。間違いなくシズちゃん自身なんだと思い知らされた。



ちっさいシズちゃん俺得。