あわない視線


歌手シズちゃん×モデル臨也
愛の唄のシズちゃんside
みんな別人


 折原臨也
 5月4日生まれ、23歳
 モデル、俳優
 高校を卒業した春、新宿でスカウトされ、モデルデビュー
 中性的な顔と、均整のとれたスタイルで、一躍トップモデルとなる。
 現在、某有名ブランドと専属契約中の他、多数の雑誌に起用されている。
 先日発売された1st写真集は、驚異的な売上を記録した。


 俺が知っている折原臨也の情報なんてこれくらいだ。
 つまり、世間向けに発表されているプロフィールしか知らないってことだ。
 雑誌を見れば、すぐにわかってしまう程度の。


 事務所に新しく入ったモデルだと、マネージャーのトムさんに写真を見せられた時は驚いた。
 こんな綺麗な人間がいるのか、と。そして一方で、嘘くさい笑顔だ、とも。
 それから、なぜか気になって、臨也の出てる雑誌は必ずチェックするようになった。
 周りからは、ようやく身なりに気を使うようななったかと笑われたが、そうじゃない。
 雑誌では、臨也しか見ていなかった。
 インタビュー記事もおもしれぇんだよな。グダグダ話してんのは少しムカつくが、頭がいいんだろうなとはすぐわかった。

 こんなに誰かに興味を持ったのは初めてだった。
 写真でしか見たことのない臨也。声も、話し方も、動作も、何も知らない。
 それでも、気になって気になって。
 いい感情ばかりではない。正直、いらっとすることもある。でも気になるのだ。


 昨日発売したばかりの、臨也が表紙の雑誌をめくる。
 この雑誌は、臨也がメインで載る事が多く、毎月必ず買っていた。
 同じ事務所だから、一度くらいは会えるかと淡い期待もしていたが、ジャンルが違うと、全くその機会はまわってこなかった。


「どーした静雄、暗いぞ」
「すんませんトムさん、ちょっと考え事してて。それよりどうでした新曲?」
 どんよりした俺を、トムさんはさりげなくフォローしてくれる。ありがたい。
「新曲、すげえ好評だぞ。このまま発売する予定だ。最近、ホントに調子いいな」
「ホントっすか?ありがとうございます」
トムさんに喜んでもらえるのは、単純に嬉しかった。いつも迷惑ばかりかけていたから。
 それに今回の新曲は、いつもより思い入れが強かったから。

「プロモの方、どうっすかね?」
「お前の希望通りいきそうだぜ、えっと…



折原臨也」


 聞いた瞬間、緊張が俺を包むのがわかった。
 この曲は、気付いたら臨也を思って歌っていたから。歌詞と、臨也が気になる自分の気持ちがぴったり一致していた。
 だから、プロモも臨也に出演を依頼した。この曲を表現できるのは、臨也しかいねえ。


「そうっすか…」
「何だよ、嬉しくねぇのか?」
 嬉しい、のは嬉しいが、それだけでは表現できないこの気持ちは何なのか。
 やつに会えば、答えが出ると訳もなく思った。

 ついに会える。
 撮影は一週間後に迫っていた。



ズちゃんの口調がわからなくなってきた。そしてトムさんはなおわからん。
まだシズ→←←←←イザ