届かないこの言葉


臨也死んでます。


臨也が死んだ。


理由は知らねえ。
殺されたのかと思ったが、事故死だったらしい。
詳しくは聞かなかった。
聞いてもどうしようもねぇし、気にもならねぇ。


臨也がいなくなってから、池袋は静かになった。
あぁ清々する。


だが、俺は、退屈すぎる毎日に早くもうんざりしていた。


呆気なかった。
俺の七年は、こんなにも呆気なく終わってしまった。
臨也を殺すことだけを考えて生きてきた。
その目的を、自分で達成することもできず、突然奪われた。
あっさりと平穏を手に入れた。


よかったはずなのに。
これでよかったはずなのに。
毎日がつまらなくて、苛々はつのるばかりだった。



「静雄、大丈夫か?」

トムさんには、臨也が死んだあの日から迷惑かけっぱなしだ。
なんせ器物破損が倍になってる。
取立もうまくいってない。
「すんませんトムさん。」
「いや、いいんだけどよ。
次の取立はお前がいねぇとちょっと危ねぇし、頼むぜ」
「うす」




苛立ちも収まらないまま、雑居ビルの一角に入っていく。
テレクラの料金滞納している男は、ドアのノックであっさり出て来た。
ヤのつく奴らの下っ端らしいそいつは、トムさんの説得を聞かず、怒鳴り散らすだけ。
ああいらつく。
止めるトムさんの声も聞こえたが、トムさんにあんな罵声を浴びせたんだ。
殺されても文句は言えねぇよなぁ?


たいして身長もねぇそいつを、おもいっきり掴み上げる。
いきなり浮かび上がった体に奴はあたふたしているが、知ったことかと投げ飛ばした。
壁に激突した男は、そのままあっさりと気絶した。


「あーお疲れ静雄、財布から金いただくか」
トムさんは、男の懐から財布を取り出すと、金額を確認して抜き取り、領収書を代わりに入れた。

さて帰るか、案外あっさりだったな、と
油断していたのかもしれない。
偶然が重なったのかもしれない。


突然ガタガタっと音がすると、俺とトムさんに向かって大量の鉄パイプが降ってきた。
なんの罠だ?あの男が仕掛けていたのか?
気付いた時には、鉄パイプが目の前に迫っていて、
俺にできたのは、トムさんを突き飛ばすことだけだった。



目を固く閉じた。
さすがにこの量だと、大怪我かもな。
だが、いつまでたっても衝撃はこなかった。
恐る恐る目を開く。
そこで、俺を庇うように鉄パイプを支えていたのは、


「いざ、や?」

「     」


口を開いて、なにかを言っていたのはわかる。
だが、何も聞こえない。
いつもと違う白い服。
透き通った体。
でも、そこにいるのは間違いなく臨也だった。


「臨也、なんだろ?」


俺の問い掛けに応えることはせず、焦った顔でこちらを見る臨也。
こんな表情初めて見た。
生きてたんだな、と手をのばそうとした瞬間。
臨也は泣きそうな顔をして、


跡形もなく消えてしまった。


臨也がいなくなり、支えを失った鉄パイプは、俺を避けて床に叩きつけられる。
「静雄、大丈夫か?!」
トムさんが心配そうに俺に駆け寄ってくるが、俺には返事をする余裕もなかった。

「……静雄?お前、」


久しぶりに目に感じた、熱さ。
止めようとしても止まらない涙は、溢れるように流れていく。


あぁ、俺はやっと気付いたのだ。
臨也はもういないのだと。
本当に、死んでしまったのだと。


なぜ、臨也が俺を助けたのかはわからない。
最後に何を言いたかったのかもわからない。


だが、俺には確かに、臨也に言いたいことができたのに。



「静雄?大丈夫か?」
「…すんませんトムさん。もう少し、だけ」
その場にうずくまったまま、動くこともできず、俺は顔を押し付けた腕が濡れていくのを感じていた。



お迎え○す。パロ
書きたいところだけ書いたので、意味わからなくてすみません。