He will love him


だいぶ遅刻ですがデリ誕


今までたくさんの女の子たちと遊んできて。
どんなことを話したら笑ってくれるか、どんなことをしたら喜んでくれるか、全部わかったつもりでいた。
なのに。

「…デリック?」
「う、あの、ひび、や」
「なんだ?」

本命の前では何にもできないヘタレだったなんて…!!


日々也が好きだ。
初めて会ったときから、もうこの人しかいないってほどに惚れてしまった。
男を好きになったのは初めてだけど、自分に自信を持っていたからすぐ付き合えるって思ってた。
「あのな、今度の木曜なんだけど、えっと、あの」
「木曜はもう3度も聞いた。何なんだ一体…」
「あーえっと、その」
言えない。
次の木曜日が自分の誕生日だから、一緒に食事でも。
たったそれだけが言えない。
いつもだったらスマートにかっこよく言えるのに、そうして日々也には言えないんだろう。

そうして俺がわたわたしているのにあきれたのか、部屋には大きな溜息が響いた。
「日々也…?」
「何なんだ。話がないならもう帰るぞ」
「ちょっ、待って!」
「なら早く言え」
「……」
言え、俺!
今言わなくてどうする!!
「帰る」
「木曜日、一緒に食事して!!」

勢いにまかせて怒鳴りつけるようになんとか用件だけは絞り出すことができた。
しかしスマートとは程遠い誘い方だ。
これで日々也がうんと言うはずが…
「わかった」
「え?」
「木曜日に夕食ってことだろう?6時にここに来ればいいか?」
「あ、それで」
「じゃあな」
「…はい」
情けない。
こんなかっこ悪い俺なんて信じられない。
でもまぁ、とりあえず。
木曜日の約束を取り付けた俺は、天にも上る気持ちだった。


そして木曜日。
俺が一番気に入っているレストランに日々也と二人でいた。
あぁ日々也かわいい。
高級レストランの雰囲気にも負けない、高貴な雰囲気の日々也は、贔屓目に見ても美しかった。
そんな日々也を前に、俺が言葉を普通に紡げるはずもなく。

「美味しいな」
「えっ、ああ…そうだね」
「いいレストランだな」
「あ、ありがと…う」

せっかくの誕生日だというのに、肝心なことも言えず、何も話せず、こうして終わってしまうのか。
そう思うと、あまりの情けなさに涙が出そうだ。
「デリック!?何を泣いている?」
「えっ?うわっ!!」
日々也に指摘されて頬をなでると、そこがしっとりと濡れていた。
手に次々と雫がこぼれてくる。
「何かあったのか…?」
「いやこれは違くて、何やってんだ俺…」

本当に何やってんだ俺は。
こんなかっこ悪くて情けなくて、せっかく日々也と食事できたのにダメなところばっかりで。
絶対嫌われた。
もうダメだ…

「なあデリック」
「ひびや…?」
「お前はいっつも僕とちゃんと会話してくれないけど、なんでだ?」
なんでってそれは、俺が日々也を好きだからで…
「俺の事が嫌いなのか?だから泣いてるのか?」
「っ!そんな訳ない!!」
思わずテーブルを叩いて立ち上がる。
周りの視線を痛いほど感じたが、そんなのに構っていられる余裕はなかった。
「日々也のこと嫌いとかそんなわけないだろ…」
「落ちつけって」
座っても、俺と高ぶった気持ちは抑えられなかった。
俺は気持ちを日々也に伝えることができない。
でもこの気持ちだけは疑われたくなかった。
「じゃあなんで話してくれないんだ?」
「それは…それは日々也を…」
「僕を?」

真ん丸な目で見てくる日々也。
いつも日々也の目をちゃんと見れないから、こんな風にしっかり見つめるのはもしかしたら初めてかもしれない。
とても綺麗な。
決して逸らすことのできない、日々也の純心さ、高貴さを全部詰めたようなその目が俺は

「すきだ」
「えっ?」
「っ!!」
俺いま好きって言った?
なんか頭動いてなくて、ただ日々也の目が綺麗だってそういうつもりで…
「いや今のは違くて」
「…違うのか?」
「ちっ、違くない!!」
違うはずがない。
いったいどれほど自分が日々也が好きなのか、いつだって日々也の事を考えてきた。
それをわかってほしい。
「日々也が…好きだよ」
涙ながらに伝えた言葉は君に伝わっただろうか。
こんなぐちゃぐちゃな顔で、かっこよさなんてかけらもなかったけど。
それが俺の精いっぱいだったから。

「僕も君が好きだ」
あまりにも男前にそう告げた日々也の言葉に、またぐちゃぐちゃに泣いてしまって、溜息まじりの日々也に顔を拭いてもらうことになるのだけど。

きっと今日は俺の最高の誕生日。




途中からぐだぐだになってしまいました。
とにかくヘタレデリックを書きたかったのですが…
大遅刻しちゃいましたが、デリック誕生日おめでとう!!