いっそ冷たく突き放してくれたら



「ちょっ、やめ、んんっ」
「も、はなしてっ、ってばぁ」
「やっあっ、……離せって言ってるだろ!!!」

思いっきり手を叩くと、シズちゃんは恨めしげな顔でこちらを見てきた。
そんな顔しても、もう触らせてなんかやらないよ。
「んだよ臨也、別に減るもんじゃねぇし」
「減るっつーの、ってかさぁシズちゃん、男の胸揉んで楽しい?」
「おう」
「……」


シズちゃんは、俺の胸が大好きだ。
…こう言うのさえも嫌なんだけど、シズちゃんは飽きもせず会う度会う度、俺の胸を揉んでくる。
女でもないのに、胸の肉を集めて持ち上げて揉んで。ひたすらその繰り返し。

シズちゃんに触ってもらえるのは嬉しいんだけどさ、どうせ触るなら手とか頭とかそういうところがいいわけで。
よりにもよって胸。なんで胸。

しかもシズちゃんは、胸を触っている間はなにも話さない。
胸を触りながらテレビを見たり、コーヒーを飲んだり、雑誌を見たりしている。
せっかく一緒にいるのに、これは一体なんなんだろう。

「臨也、早く触らせろよ」
隣に座ったシズちゃんは、ちょっと苛々した感じで服の上から乳首をなでてきた。
いくら俺でも、直接乳首に触られたら反応してしまう。
シズちゃんに開発されたカラダは、シズちゃんの手に従順だ。
全身がビクッと跳ねると、力が抜けた瞬間に服の中に手が入ってきた。

「ひゃあっ、やめてよシズちゃん!」
「んでだよ、気持ちいいんだろ?」
「やだやだ!もうやめてってば!!」

シズちゃんは別にセックスとかそういう意味で触ってるんじゃない。
ただぬいぐるみを触るのと同じで触ってるだけだ。
なのに俺だけが一方的にそういう気分になるのも嫌だし、それに。

「…?!おい、なに泣いてんだよ」
「っ!泣いて、ない!!」
「泣いてんだろうが。そんなに嫌だったのか?」

気がつくと、俺の目からは大粒の涙がこぼれていた。
泣くつもりなんて全然なかったのに、自覚してしまうと溢れてとまらない。
さすがのシズちゃんもびっくりしたのか、おろおろと俺の頭をなで始めた。
あぁやっぱり、胸よりこうしてなでられる方がいいなぁ…

「どうした?大丈夫か?」
心配そうに俺を見つめるシズちゃん。
いい機会だから、ずっと気になっていたことを聞いていいだろうか。

「シズちゃんはさぁ…」
「ん?」
「やっぱり女の子がいいんじゃないの…?」

だって胸が好きってそういうことだろ?
どうせなら可愛くて柔らかい胸をもった女の子がいいんじゃないの?
だけど女の子の胸なんてさわったら壊しちゃうから、男の俺で我慢してるんじゃないの?
ずっと思ってた。だからずっと嫌だった。
シズちゃんが俺の胸を触るたび、本当は女の子がいいって言ってるようで。
だから…

「…何言ってんだお前」
「…え?」
「なんでそこに女が出てくるんだよ」
「だって胸、さわってくるし。俺のぺったんこの胸より女の子の方がずっといいじゃんか」
自分で言っていて嫌になる。
やっととまってきた涙が、ふたたび溢れてきた。
ごしごしと目をこすると、「傷がつくだろ」と手を止められた。

「別に胸が好きだから触ってたわけじゃねぇんだけどな」
「は?」
「ただお前に触ってたかっただけだし。女の胸とか興味ねぇよ」
「え?え?じゃあなんで胸なの?だったら手とかでもいいじゃん」
「あーそれはなぁ」
俺の頭を抱えて、耳元にそっと唇をよせた。


「嫌がってんのに感じてるてめぇが可愛かったから」


ぼんっと音がするかと思うほど真っ赤になった俺の服の中には、こりないシズちゃんの手が入ってこようとしていた。



久しぶりに小説かいたら、感覚がつかめないです…
駄文失礼しました


title by stardust