知らないではすまない 油断していた。 今日はシズちゃんは池袋にいないという情報は得ていた。 だからなんの脅威もなく池袋を歩けると、ほとんど周りに注意せず歩いていたんだ。 「目が覚めたか」 気がつくと俺は、真っ暗な倉庫のようなところに、目を覆われ、手を柱のようなものに縛り付けられた状態だった。 後頭部がずきずきしていることから、どうやら頭を殴られて、気絶したところをここに運ばれたようだ。 「ずいぶん手荒な招待だね。俺になんの用かな」 「この状態でよくそんな冷静でいられるな。俺に覚えはないか」 「何も見えないんでね。全く覚えていないなぁ」 そうは言ったが、実はうっすら覚えている。 この声は、確か1ヶ月前くらいに、取引のために利用した男だ。 恨まれるだけのことをした自覚はある。 会社をクビになって、家を失ったはずだ。 だがまさかこんなことをするとは、俺の読みも甘かったということか。 「ふん!まぁいい。お前には散々だまされたからな。痛い目見せないと気がすまないんだよ!」 予想通りの展開だ。 だがおそらくここにはこの男一人しかいない。 ナイフは奪われていない。 十分逃げられる。 そう思ったのだが。 いきなり口に布のようなものを押しつけられた。 この匂い…まさか薬品か?! 急だったため、防ぐ暇もなく薬品を思い切り吸い込んでしまった。 頭がくらくらして、体から力が抜けていく。 「…っ!何をした!」 「心配しなくても毒じゃない。ちょっと大人しくしてもらうだけだ」 そういうと、男は俺を押し倒した。 「ちょっ!なにすんだよ!!」 男の手が、俺のズボンのジッパーを下ろしていた。 何だよこれ!痛い目って殴る蹴るじゃないのかよ!! 気づくと下着だけの格好にさせられた俺は、入らない力で精いっぱい抵抗する。 「お前に暴力をふるったところで、復讐されるだけなのはわかってんだよ。だったら犯してビデオ撮って、一生脅していくほうがいいだろ」 「おかっ!?」 犯すって何考えてんだこの男! その男の本気を示すように、男の手は俺の性器に触れてきた。 痛いくらいにしごかれて、思わずこれが出そうになる。 手の動きが気持ち悪い。 そんなところを、こんな奴に触られるなんて。 まずい。非常にまずい。この男、本気だ。 気持ちいいわけじゃないのに、男の性なのか、勝手に大きくなっていく欲望に泣きたくなった。 なんで、どうして。 ぐちゅぐちゅと聞こえる音が、一層俺を追い詰めた。 言いようもない恐怖を感じた俺は、体が震えだした。 「やめろ!何が望みだよ。本気でやめろ!!」 「はっ震えてんのかよ。俺の望みはお前が苦しむことだ」 交渉決裂。 体は薬のせいで全く力が入らない。 焦りと恐怖と、そして殴られた痛みから頭も全くまわらなくてパニック状態。 怖い。 怖い怖い怖い。 男の指が、俺の後ろに入ろうと淵をさすってきた。 もう終りだ。 指がくぷりと入ってこようと力を入れた瞬間。 「…っ!」 なぜか男の息をのむ音と、何かがふっ飛ばされる音と、壁に何かが叩きつけられる音が同時に聞こえてきた。 「大丈夫か臨也!!」 「…しずちゃん?」 急にまぶしくなった方をみると、ドアから入ってくる怒った顔のシズちゃんが見えた。 「わりい遅くなって」 そう言って俺の肩にそっとシャツをかけてくれた。 シズちゃんの匂いに包まれると、ようやく安心できて、自分が本当に怖かったことを思い知らせれた。 体がかたかたと震えだす。 それに気づいたシズちゃんが俺を抱きしめた。 「…っ!!」 シズちゃんの手が俺の肌に触れた瞬間、すごく怖くてびっくりして、シズちゃんを思い切り突き飛ばしてしまった。 シズちゃんも驚いた顔をしていたけど、自分が一番驚いてしまった。 どうして。 シズちゃんなのに。あいつじゃないのに。 「ごめんっ」 きっと傷ついただろうシズちゃんに謝ると、シズちゃんは俺の手をぎゅっと握った。 「俺こそわりい。怖かったんだよな。でもちゃんと目を開けろ。ちゃんと見ろ」 そう言われて顔を上に向かされる。 怖くてずっと開けられなかった目を、ようやくちゃんとあける。 そこにいたのは、悲しそうに笑うシズちゃんだった。 「な、ちゃんと俺だろ?もう怖くないだろ?」 そう言うともう一度シズちゃんは抱きしめてきた。 ああ、もう大丈夫。 シズちゃんで満たされた俺は、そっと大きな背中に手をまわした。 余談だけど、あの男にはちゃんと制裁しておいたよ。 でもシズちゃんに自業自得じゃねぇか!ってすごく怒られました。 かさいたすく様、リクエストありがとうございまいした。 モブ臨もシズイザも中途半端になってしまったような気がしてすみません。 でもモブ臨のところ、すごい楽しかったです。 シズイザもっといちゃいちゃさせたかった。 そして静雄が男前すぎるのも、当サイトの標準装備になってたような… いつでも書きなおしますので言ってくださいね。 本当にリクエストありがとうございました。 |