また明日も手を握るから 6



両親との思い出なんてほとんどない。
商社の重役だった父と、社長秘書だった母は、多忙ゆえほとんど家にはいなかった。
一年に何日、家族がそろった日があっただろうか。
家政婦と二人きりの生活に不便はなかったが、楽しそうに家族の話をするクラスメイトの姿を見るたび、どうしようもない悲しさを感じていた。

小学校2年の時、妹が2人できた。
家族が増えたことで、少しは一緒にいられる時間が増えるかと思ったが、現状はかわらなかった。
パパ、ママ、とぐずる妹達を見ると、自分も泣きたくなった。
でも、姉として一緒に泣くことはできなかった。
妹たちを励まして、なだめて、常によい姉であるようにしてきた。

でも本当は泣きたかった。さびしいと叫びたかった。
だから私は、いつか自分が親になった時、絶対子どもにこんな思いをさせないって、ずっとずっと決めていた。

…決めていたのに。


「ごめんね…ごめんね…」
きっとこの子にも、同じ思いをさせてしまう。
「ごめんね、お父さんいなくてごめんね…」
それでも、私が絶対あなたを守る。
どこまで守れるかわからないけど。それでも頑張るから。
「私のところに生まれて、ごめんね…」
頑張るから、頑張るから。私、あなたを産むからね。



『シズちゃんへ

今までごめんなさい。
謝って許されるとは思っていません。でもごめんなさい。

シズちゃんがどんな気持ちで私といたのか、私にはわからなかったけど、
私はシズちゃんと一緒にいられて幸せでした。

いままで本当にありがとう。

そして


さようなら



折原臨美』



一通のメールを静雄に残し、折原臨美は姿を消した。




短くてすみません。
臨美ちゃんの過去はねつ造です…!