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隣の席で急にはっ!と直江が声をあげたから何かと思えば、今日の昼はサッカー部で集まらないといけないらしく一緒に食べられないと言われた4時間目。

ちょうど、腹へったもうすぐ昼休みだと考えていたところだったから直江も同じように考えてて思い出したのかも。昼休みになって、言うの忘れてたと陽介にも謝られた。


だからミーティングとやらがあるという直江と陽介を見送ったおれはいま、今日も事前に買っておいた昼飯をひとり自分の席で食べているとこ。

考えてみれば意外にも昼ひとりで食べるのは初めてだ。まだそんなに日は経ってないけど、ふたりとずっと一緒に食べてたし。


もそもそとおにぎり頬張りながら教室を見渡せば、食堂行ったり別のとこで食べたりで人はそんなにいない。いつも教室で食べてるなって人はなんとなく覚えてきた。顔だけ。

そんな見慣れてきた昼休みの教室の中で今日はいつもと違っておれの斜め前の席がなんか賑やかだった。


「やっぱ後半に速いやつ置きたいよな」


「でも前半で差つけられたくないじゃん」


「俺ここら辺がいい!」


「個人的な意見は受け付けてませーん」


体育委員の森口くんの席中心に何人か集まってさっきからわーわー話し合ってる。もうひとりの体育委員の人と、あとどっかしらの運動部の人たち。たぶん体育祭のクラス対抗リレーの走順についてだ。

おにぎり食べる以外にすることもないおれは、ぼーっと斜め後ろからその様子を眺めてる。

そういえば森口くん席近かったんだよな。この前の体育の後に気付いた。


「バトンの受け渡しもあるしさ、何パターンか作って試せばよくね?」


「それ。次の体育までに俺決めとく」


うわ。次の体育リレーの練習すんのかな。

まじかって思ってたら、それで話し合いは済んだのか森口くんの席の周りにいた人たちは自分の席戻ったり教室から出てったり。決めとくと言った森口くんだけそこでそのままうーんと悩んでる。

今の話し合い結局何も決まってなくね。がんば。

とか呑気にその背中を眺めつつ、ふたつめのおにぎりの海苔を巻いてパリッと頬張ったところで森口くんが教室を見渡すようにして振り向いた。


「お、星野」


「……ども」


おれが見てたせいで目がばっちり合ってしまった。なんか勝手に気まずくなるおれ。


「あれ?直江と小柴は?」


「なんか、サッカー部の集まりがあるって」


おれがいつも直江と陽介と食べてるって知ってるんだ。
ってちょっと意外に思いつつ答えれば、へえ、と言ってずりずりと椅子を引きずっておれの机に寄ってくる森口くん。なんだなんだ。


「それ具なに?」


え、おにぎりの話しにきたの?


「……めんたいこ」


「俺おかか派〜」


あ、そう。


「……いっこめおかかだった」


「えーひと口くれればよかったのに」


「………あ、うん。ごめん。」


「ぶはっ!」


なんかすごくコミュ力高めな返しに困惑してとりあえず謝ったら笑われた。次からは気をつけてよってふざけた感じで言われて、なにそれ次おかか食べるとき森口くんにあげなきゃいけないのっておれもちょっとだけ笑ちゃった。


「昼飯それだけ?」


「うん」


「まじ。足りなくね。ちょっと待って」


今日はおにぎりふたつだと言ったら、森口くんはおれに背を向け机の横にかけてた自分の鞄をごそごそと漁り何かを取り出してからまたこっちに向き直った。


「これ食べよ」

と言って差し出されたお菓子。ぺりぺり箱の封を開けておれの机に置かれる。


「今さあ、リレーの走順決めなきゃで悩んでんの俺」


どうしたらいいと思う?なんて言いながら森口くんはぱくぱくお菓子を口に運んでる。森口くんが食べ始めたから、おれも早く食べ終わってお菓子もらおうって思っておにぎりを頬張った。

くれるって言うなら遠慮なくもらうタイプ、おれ。


「どうしたらって…おれわかんないし。さっきみたいに運動部の人とかに聞きなよ」


「あ、聞こえてた?てか俺らがうるさかったのか。ごめん。」


勝手に聞いてたおれの方こそって感じだし、べつに大丈夫って言って明太子おにぎりの最後のひと口を口に放った。


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