その笑顔が傷つける


夜。

戦場が宇宙へ移る。から、アズラエル氏は生態CPUを連れて宇宙へあがる。今夜はその前日だ。

私達は、私とシャニは、自室でお互いを求め合っていた。


「ん……シャニ…痛い……」

「スイ姉……はぁっ……」


経験もない、加減もしらないシャニは本能のままに突いてくる。

まるで獣のように。

私はそれを受け止めきれず、快楽よりも痛みの方が頭を満たしていく。血が、流れているけどシャニは全然気にしない。


「…ッ!」


びゅる、と、膣内に何かが来た。

シャニが、射精したのだろう。

シャニは動きを止め、息を荒くしてベッドに横たわった。


「スイ姉……気持ち……?」

「うん……よかったよ……」


正直、全然良くなかった。

膣内がじんじんと悲鳴をあげてるし、腰も痛い。明日はたぶん動けないだろう。

でも、シャニの気分を損なわせるわけにはいかないから、私は嘘をつく。


シャニは度重なる手術と薬物の飲みすぎですでに生殖機能は失っている。射精はするけど、その精子に子を宿らせる力はない。だから、私は避妊をしたり、彼に避妊用具を求める必要がなかった。

それはある意味、好都合だったのかもしれない。


「スイ姉、すき、すきだよ……」

「ん……わかってるよ、シャニ……」


シャニと私は、明日。離れ離れになる。

アズラエル氏の命令だった。彼は兵士として宇宙で戦い、私は担当を離れ別の研究所へ行く。

彼は、私に“人質”になってほしいらしい。

『貴方にはアンドラス少尉にとっての「帰る場所」となってほしいのです。貴方に会いたいという気持ちが、彼の好戦的な部分を刺激し、なにがなんでも戦争に勝ち残ろうという気持ちが現れます。もちろんそれは我々の勝利にも繋がるのです。理解してくれますね?』


「スイ姉……」


シャニには、宇宙へ上がることと一緒にアズラエル氏が教えてくれたらしい。

そして、シャニに離れたくないと散々だだをこねられたあと、最後に抱いて欲しいとせがまれたのだ。

もちろん、断る理由なんてどこにもなかった。


「すき、ちゅーしよ、スイ姉」

「ん……」


まるで子供のように甘えてくる彼。よほど、私とはなれたくないのだろうか。

それはそれで、胸が痛んだ。どうせなら私のことなんて捨ててくれればよかったのに。宇宙に行ってはいおしまいってなればよかったのに。


「スイ姉、俺、絶対戻ってくるから」

「ん……」

「戻ってきて、また、きすしようね」

「ん、そうだね、シャニ」


今は、できるだけシャニに生き残ろうという気を与えなければならない。

そのためには、私が彼の帰る場所にならなければならないのだ。


「待ってるから、シャニが帰ってくるの……」

「ん……」


私達は、お互いの唇を求めた。


その笑顔が傷つける


(私の心を)


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