▼ 04
「大人になるにはどうしたらいいと思いますか?」
木星軍との戦いが一息ついたころ、格納庫で休憩を取っているところでぼくはふと、キンケドゥさんに聞いてみた。
「女と一緒に寝たら、少しは大人になるんじゃないか?」
ぼくは飲んでいたジュースを吹き出してしまった。
「怒りますよ!」
「冗談だって」
けらけらとキンケドゥさんは笑いながらぼくの頭を乱暴に撫で回した。
ふんだ、キンケドゥさんなんか、どうせ艦長とあんなことやこ、こんなこともしてるんだろ!(少し羨ましいとは口が裂けても言えない)
そこでふと、ザビーネさんが通りかかった。ぼくはなんとなく嫌な予感がした。
「なあザビーネ、大人ににるにはどうすればいいと思う?」
ほらやっぱり。キンケドゥさんは聞いた。
ザビーネさんはかなり不思議そうに首をかしげた。
「大人?歳をとれば嫌でも大人になるだろう」
「まあ、そうだよな」
へらりとキンケドゥさんは笑って、「悪かったな」と片手をあげた。
くだらないことを聞くな、とでも言うようにザビーネさんは踵を返して去っていった。
「すごくまともな意見でしたね」
「ザビーネらしいよ」
ぼくとキンケドゥさんはお互いを見合わせて、苦笑いした。
そしてもうしばらく他愛ない会話をして、休憩を取るために自分達の部屋に戻った。
……結局どうすれば大人になるか、ってよくわからなかったなあ。
ぼくとしては、憧れの「大人」といえばキンケドゥさんだ。もちろんパイロットとしても。
あの器の大きいところとか、面倒見のいいところとか、彼女(ベラ艦長)を大事にしてるところとか。尊敬するところばかりだ。
でもザビーネさんも大人といえば大人なんだよなあ。常に冷静沈着で、的確な判断で次々に仕事をこなしていってる、っていうか。
………うーん。やっぱり、歳を取ればそれなりに大人になるってことなのかな。
でもそれじゃあ遅いんだよなあ。もたもたしてたら、スイさんモテるから他の男に取られるかもしれないし、ザビーネさんとゴールインするかもしれないし。
それに、お互い伝えられなくなるかもしれないし。
スイさんは、ザビーネさんみたいな冷静な大人の方が好みなのかな?
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